【コラム】アメーバ経営──その経営管理システム

「アメーバ経営」は、京セラ創業者の稲盛和夫氏が「企業が健全に発展していくためには、誰が見ても正しい『経営哲学』と、それに基づく『経営管理システム』を確立することが不可欠である」と、みずからの実体験に基づく“統覚”(多様な経験を統合してはっきりと知覚すること)によって生まれた独自の方法論である。
「ともに苦楽を分かち合い、経営の重責を担う共同経営者がほしい」と心の底から願うようになった稲盛氏は、会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる小さな集団(数人~数十人)に分け、それぞれ独立採算で経営を任せることで、経営者意識を持つリーダーを多数育成するだけでなく、「全従業員の力を結集する『全員参加経営』」を実現するための仕組みを編み出した。
 アメーバリーダーは、各ユニットの経営計画、実績管理、労務管理、資材発注を行い、「売上最大、経費最小」という経営の原則を追求する。その際、原価を積み上げて製品の売値を決める「原価+利益=売値」ではなく、市場価格をダイレクトに反映させるために「売値─原価=利益」という考え方をもとに、「市場に直結した部門別採算制度」を採用している。これは、生産方式の違いによって次の2つに分かれている。

(1)受注生産方式の場合(B2B)
 市場価格の変動が製造部門のアメーバの収入に直接連動するように、「顧客への売上金額=製造部門の生産金額」ととらえ、「製造部門の利益=生産金額─製造原価─営業口銭」となる。
営業部門は、生産金額に対する一定率を「営業口銭」として、製造部門から受け取り、これが「営業収入」となる。つまり、「営業部門の利益=営業収入─営業経費」となる。
製造部門を主体にしながらも、常に市場を意識させることで、製販一体となる経営を実現する狙いがある。

 

(2)汎用品販売方式の場合(B2C)
市場価格をもとに、営業と製造部門との間で決められた社内売買価格が、「製造収入」となる。したがって、「製造部門の利益=製造収入─製造原価」となる。
営業部門は市場動向を的確に把握し、販売と価格予測を行って、必要な数量を製造へ社内発注する。このため、在庫は営業が責任を負い、評価減が発生した場合は営業の負担となる。
「営業部門の利益=顧客への売上金額─売上原価─営業経費」となる。

 

 なお、アメーバ間の取引(社内売りと社内買い)も市場価格を基本に値決めされている。
 こうして、それぞれのアメーバの利益(総付加価値)が生み出されるわけだが、その収支状況をとらえるために、事業活動に要したチームメンバー全員の総労働時間で割った「時間当り採算表」が算出され、経営の効率と実態が精度高く把握できるようになっている。
 詳しくは、稲盛和夫氏の著書『アメーバ経営』(日本経済新聞社)や、京セラコミュニケーションシステムのホームページなどを参照いただきたい。

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