アメーバ経営と聞くと、「勝ちに行く経営」というよりも、「絶対負けない経営」というイメージがあります。しかし、今後はリスクを取って、勝ちに行く経営を目指すということでしょうか。
 アメーバ経営の原点は非常にシンプルで、要は「経営者一人が数万人を率いていくことはできない」ということです。稲盛は、会社の中に経営者がたくさん生まれるような組織にしようと考えました。アメーバリーダー=経営者という考え方であり、当社の成長に伴って、アメーバの数はどんどん増えていきました。いまでは3000~4000くらいあると思います。
 ただし、アメーバ内のメンバーが数百人にもなると、リーダーみずからがすべてを見ることができなくなります。ですからアメーバの多くは、アメーバリーダーが統括できるサイズとして、数十人以下のユニットで構成されています。
 また、アメーバリーダーが「これ以上は見きれない」と思うサイズになったら、事業部長に相談し、組織を分割します。アメーバの名の通り、細胞のように分裂して増殖するわけです。
 ただし、一部には大きくなりすぎて、多少硬直化しているものもあります。特に創業から続いている事業はかなり固定化していますので、人を入れ替えるなどの刺激を与えないといけないアメーバもあるでしょう。実際、私がファインセラミック部門の本部長時代には、かなりアメーバをいじりました。
 このように当社では、一つひとつのアメーバが増殖と分裂を繰り返してはいますが、正直に言えば、リスクを取って何かに挑戦するといった攻めの組織ではないかもしれません。
 ですから、既存の製品については製造部門がアメーバ経営できっちり採算を上げていきながらも、新たな製品やサービスについてはマーケティング部門やR&D部門の連携による挑戦が必要です。そうすることで、新たな価値を創造していかなければならないと思います。

 アメーバが元気に動き回って、新しい変化に適応できる“動的なシステム”をつくるためには、相互のコミュニケーションも不可欠ですね。
 その意味では、アメーバリーダー同士のコミュニケーションはもちろんのこと、幹部同士のコミュニケーションも重要です。
 当社では、「幹部会」という会議を毎月1回、全部門で3ないしは4日間にわたって実施しています。彼らとの質疑応答をじっくり行い、我々経営陣も議論に参加することで、関連会社を含めたグループ全体が現在どう動いているのか、という実態を把握することができます。
 また当社では、「コンパ」と呼んでいる懇親会もよく行います。畳の上で肩が触れるくらいの距離で車座になって、飲みながらいろんなことを本音で話し合います。十数人から100人以上でやる場合もあります。ちなみに京都の本社には、1フロアの半分を占める100畳敷きの和室がありますし、各工場にも和室があります。その和室でコンパをやることがほとんどですね。
 コンパではもちろん雑談もしますが、必然的に仕事に関連した話題が多くなります。なお、コンパを主催するリーダーには、「酔っ払ってもいいが、乱れてはいけない」という暗黙の掟が課されています(笑)。

AIとロボティクスを活用した
劇的な生産性向上

 谷本さんは「2020年度に売上高2兆円、税引前利益率15%」という目標を掲げました。4つの重点分野(注2)で、「生産性倍増&プロセス改革」と、「社内シナジーの強化&外部協業の加速」をテーマにされていますが、一番お聞きしたいのは「生産性倍増」についてです。なかでも特筆すべきは、「AIラボ」と「ロボット活用センター」という新機軸によって生産性を劇的に上げようという試みです。すでに大きな手応えを感じていると聞いていますが、具体的にはどのような取り組みでしょうか。
 この生産性倍増の取り組みは、もともと私がファインセラミック部門の本部長時代からやっていたものです。ロボットとAIを組み合わせたモデルラインが、鹿児島の国分工場と、滋賀の蒲生工場で動き始めており、当初予想した通りの効果が出ています。2020年の3月までには、鹿児島の川内工場でも同様のラインが立ち上がります。
これでファインセラミックスのモデルラインが一通りでき上がりますので、それらで実証できたシステムを、2018年度中に稼働開始する国分工場の新棟にも導入予定です。
 また、ファインセラミックスだけでなく、京セラドキュメントソリューションズにおいても、三重県の玉城工場での複写機トナー、中国の石龍工場での感光ドラム、それぞれで全自動ラインの稼働が始まっています。いずれも人員が従来の10分の1にまで削減でき、劇的な生産性向上を実現しています。
こうした成功現場へ全社から見学に行かせていますので、刺激を受けた各部門がいま、いろいろな計画を策定しています。

注2)情報通信、自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアの4分野。