「予想通りの効果が出ている」とおっしゃっていましたが、具体的にはAIをどのように活用されたのですか。
 たとえばファインセラミックスの製造工程では、成形して焼成する際に必ず縮みが発生します。そのため、どれだけ縮むかを予測して成形するのですが、なかなかピタリといきません。数個を先に焼成し、寸法通りになっているかを精密に測り、ズレていれば微妙な補正を重ねるため、焼成作業には相当な時間かかります。時には1日くらいラインを止めて待つこともあって、効率がとても悪かったのです。
 そこでAIを導入し、いろんなデータを入力して縮み方を予測したところ、焼き上がりがピタリと目標の寸法に仕上がるようになりました。人間が手間暇かけてやっていたことを、AIで一気に作業効率化することで、生産プロセスの革新という当初の目論見はほぼ達成できました。
 もちろん、これらの取り組みもまだ一部で始まったばかりですし、グループ全体に横展開していくのはこれからです。でも、その歩みは確実に加速していかねばなりません。
 というのも、人口減少がますます進んでいく日本において、人手不足は深刻な問題となります。実際、当社も定年退職者の数が増えてきており、その数を補う採用ができるかは、今後の課題でもあります。だからこそ、並行して、生産性向上も必死にやらざるをえないのです。

 また、AI導入は工場の生産ラインだけに留まらず、2018年4月からは間接部門の業務革新にも取り入れているそうですね。ただし一般的に、事務作業全般のAI化はとても難しいといわれていますが。
 実は、共通部門である間接部門にも、縦割りが強い傾向があります。人事、資材、経理と、部門はいくつもありますが、部門同士の交流は比較的少ないのが実情です。
 そこで外部の専門家に入ってもらって、各部門がどんな仕事をしているのか分析してもらいました。すると、似たような業務をあちこちでやっていることがわかり、非効率な部分がたくさん見えてきたのです。
 当社従業員のおよそ半分は、こうした間接部門をはじめとした、直接は製造現場に携わらない人たちなので、工場でいくら生産性を上げても効果は限定的となってしまいます。だからこそ、間接部門の生産性向上が不可欠なのです。
 しかも業務革新と掲げる以上、やはり3割くらいは生産性を上げなければ意味がないでしょう。もちろん、ここでもAIやロボティクスを活用していきますし、それらを事務作業のどこで活用するかは、これからの大きなテーマでもあります。

 そのうえで課題となってくるのは、AIのプロフェッショナルが日本では非常に少ない、という現実です。
 当社にもAIの専門家はいますが、その数は需要の2割くらい。不足分はいま、外部企業のプロフェッショナルにお願いしています。
 もともと日本には、AI活用のカギを握るデータサイエンティストがほとんどいません。データサイエンス学部のある大学は、中国ではすでに300校くらいあるようですが、日本にはまだ2、3校と、数える程度。しかも、そうした学生にはオファーが殺到するでしょうし、何より、彼らが卒業するまでに最低4年かかります。正直、それを待っているわけにはいきませんので、社内で育てていくという試みも始めました。
 具体的には、外部の専門家に、社員へのトレーニングをしてもらっています。当然、誰でもよいわけではなく、大学レベルの数学知識が必要ですし、日進月歩どころか、秒進分歩のようなデジタルの世界に対応するには、デジタルネイティブ世代といわれる若者たちでないと、そのスピードについていくことはできません。
 とにかく、彼らに座学で数カ月、実習で1年ほど集中的に学んでもらい、データサイエンティストとして、当社の生産性倍増はもちろん、新事業の創出にも貢献してほしいと考えています。