「インテリジェント・
 オートメーション」を目指す

 RPAは、他のデジタル技術と組み合わせた「自動化領域の拡張」では、どのような取り組みが必要になりますか。

 RPAは、あらかじめ定義された作業を、定義したようにセットアップすると、その通りに動くだけです。したがって、RPA単体でできることは限られており、他の技術と組み合わせることで自動化領域は広がります。たとえば、ユーザーインターフェースの質を向上させるために、RPAとチャットボット(テキストや音声を通じて会話を自動化するプログラム)を組み合わせるといったケースが考えられますが、このような方向性を模索すべきでしょう。
 さらに、RPAというソリューションに限定せず、さらなる業務自動化の発展段階として、「インテリジェント・オートメーション」(IA)ということを考えてみてはどうでしょう。我々は、IAを単なる自動化ソリューションの総称としてではなく、自動化の戦略立案から実行までの包括的なアプローチと定義しています。
 まず重要なのは、何を目的あるいはゴールとして、業務にIAをどのように導入していくのか、またテクノロジー主導ではなくビジネス主導で戦略的に検討することだと考えています。次に実際の導入に当たっては、そのゴールを達成するために必要となる改革をどのように進めていくのか、どう実現していくのかについて、中長期的なプランが重要です。
 IAを自社のモデルチェンジにどう活用していくかを考えることは、単に業務ツールを置き換えることではなく、そのためにプロセスはどうあるべきか、目的を達成する仕組みを支えるデータをいかに保持すべきで、そのためには何が必要か、そうした変化後の業務に対応する組織モデルはどうあるべきで、人材としてはどのようなスキルセットへの移行が必要なのか、そしてテクノロジーとしては何を使うべきか、組み合わせるべきか、といった非常に多面的かつ包括的なアプローチが必要です。我々はこれらの変革を総称して、IAと考えています。
 RPAを導入し、そこからDXへと発展させるには、やはりCoEの力量が問われることになります。
 繰り返しになりますが、オペレーションモデルの構築は、言うまでもなくCoEの仕事です。プロジェクト推進という側面ではプロジェクトの旗振り役でもあるCoEは、情報の集約と発信・共有を担う一方、プロセスと組織の設計を行います。加えて、現場へのトレーニングの提供、自動化への現場の要求に関する優先順位付けといった仕事もあります。一方、CoEとは別に、導入/開発チームを立ち上げ、対象業務の選定、要件定義・開発・導入を任せます。
 RPAプロジェクトといっても、けっして特別なものではなく、求められるスキルやリーダーシップも、通常のプロジェクトマネジメントと本質的には変わりません。ただし、組織横断的な取り組みになりますから、CoEは、複数部門のニーズや利害を調整したり、部分と全体の整合性を図ったりする必要があります。
  強いCoEの下、中央集権的に推進するのか、あるいはCoEは方針の策定とプロジェクトの進捗管理だけを担当し、それ以外は各部門に任せる分権化がよいのか、さらには両者のハイブリッドがいいのか、進め方はさまざまです。

RPAプロジェクトは
業務の見直しにつながれば成功

 かつてのBPRの轍を踏むことなく、RPAをDXへ発展させるには、どのようなことに注意すればよいでしょう。

 RPAプロジェクトを始めたことで、「個々の業務を見直すきっかけになった」という例が少なくありません。実は、それこそがRPA導入の大きな副産物なのです。
 ある企業のケースでは、業務プロセスの組織横断的な分析と可視化、自動化ロボットの開発を同時並行で進めていましたが、なかには改善すればRPAに置き換える必要はないという結論に至った業務もありました。
 RPAの目的は、必ずしも自動化ではなく、業務の効率化と生産性の向上です。しかし、こうした改善努力は日常的に行われることはありません。プロジェクトを立ち上げたからこそ、知ることができたのです。
極端な話、「RPAの導入そのものは失敗してもいいから、業務を見直す機会になれば成功といえる」と話していたプロジェクトリーダーもいるくらいです。

 RPAによって定型業務や単純作業を極限まで減らし、人々を新たな価値創造に向かわせることが可能になるといわれますが、どのような価値が期待されますか。

 付加価値とは何か、価値創造とはどのような活動かについて、あらためて考えてみるべきです。個人的には、社員のキャリアパスという観点も加味して、2つの方向性があると考えています。
 一つは、データアナリティクスやAIの活用といったアウトプットの高度化です。最近、「データ・イズ・ザ・ニュー・オイル」(データは新しい石油)といわれていますが、「自分たちしか知りえないデータ」を収集・蓄積・活用することが価値創造の源泉となり、実際に差別化にもつながっています。つまり、RPA導入を契機に、デジタル化されたデータを別の付加価値を創造するソリューションへ活用するということです。
 もう一つは、業務プロセスの高度化とその確実な運用サポートです。これについて説明は不要でしょう。
 RPAプロジェクトに限らず、多くの業務改革では、コストや工程、労働時間の削減といったことに目が行きがちですが、こうした効率化ばかりを追求すると、目的を見誤る危険性があります。だからこそ、経営者は、RPA、さらにはDXのビジョンを組織メンバーに具体的に示す必要があります。
 そして、その自動化の旅では、RPAはDXのドアオープナーとして利用できる自動化手段の一つといえるでしょう。


  1. ●企画・制作:ダイヤモンド クォータリー編集部

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