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新たなフィロソフィーが
会社を方向付けるコンパスに

 融合することでイノベーションが生まれた背景には、技術者の意識が大きく変わったことがあると思います。その体験をもとに次は、社員一人ひとりのマインドセットをどう変えるかがテーマになりますね。
 社員のマインドセットを変えるためには、会社の目的や価値観をもう一度整理しておく必要があります。そこで組織の次に変えたのが、会社のあるべき姿。2014年、新たに掲げた「ヤマハフィロソフィー」(図表「顧客にすべてのベクトルを合わせたヤマハフィロソフィー」を参照)です。というのも当社には企業理念や社訓などいろんなものが点在していて、何を基軸にすればいいのかわからない状況だったからです。


 フィロソフィーをまとめるに当たり、最初につくったのが「行動指針」です。これは、ヤマハの人間としてどういうDNAに基づいて仕事をしていくかを明確にしたもの。これに関してはトップダウンで決めたわけではなく、私や役員が海外も含めた各現場に入って、さまざまな階層の人たちを巻き込みながら徹底的に議論しました。そのために必要な、会社の歴史もじっくりと学んでもらいました。そうしたプロセスを経て、何を大事にしなければならないか、どうあるべきかを、社員みんながきちんと腹に落ちる形で示したかったのです。
 正直それまでは、うちの社員は自分の意見をあまり言わない傾向がありました。よって行動指針をつくった背景には、オープンに語り合おうという意識を喚起する狙いもありました。行動指針のポイントは自発と挑戦ですが、その源泉となるのはパッションを持った志です。これを醸成しながらフィロソフィーの体系をまとめていったのです。
 さらには、このフィロソフィーの実現を後押しするために人事制度も変えました。行動指針を実践し、常に一歩先を目指して挑戦している人を評価および応援する仕組みとして新たな給与とポジションを決め、透明性も高めました。その結果、これまでと違ってポンポンと飛び級で上がっていく人も出てきました。さらには、高い技術力を持っているといった余人をもって代えがたい人材の処遇についても、高度専門職の導入などで明確にしています。

 ヤマハフィロソフィーの体系図を見ると、“感動を・ともに・創る”という「コーポレートスローガン」を中心に、その前後に「顧客体験」と「企業理念」が置かれ、この3つが縦の基軸となっています。
 さらにその左右には「品質指針」と「行動指針」が置かれており、ヤマハのバリューを生み出すための、言わば車の両輪だといえます。つまりこの基軸と両輪の組み合わせが、どんな会社を目指すかを方向付けるコンパスになるということですね。
 その通りです。体系図の左右にある「品質指針」と「行動指針」は、お客様に価値を提供し続けるため、前に進むための両輪です。体系図の先端に「顧客体験」を置いているのは、すべてのベクトルをお客様に合わせるためでもあります。一人ひとりが想いを持って、顧客体験の実現のために取り組んでいく。これからのヤマハはこれで新たなイノベーションロードを突き進んでいくんだと、はっきりと示しました。