取締役には
「冷たく見る」目が不可欠

 サクセッションプラン(後継者育成計画)については、コーポレートガバナンスの観点から透明かつ公平なプロセスとして確立すると同時に、公に開示する方向に進みつつあります。その一方、後継者指名は暗黙的にCEOの専権事項とされている実態も否定できません。現職トップの関与はどこまで許されるのでしょうか。

 サクセッションプランが整備されている企業は、たしかにまだ少数派でしょう。だからといって、サクセッションプランをきちんと準備して開示せよ、と政府や証券取引所が口を出す必要があるのでしょうか。それは、本来取締役会の仕事です。つまり、どのようなサクセッションプランを用意しているのかを経営陣に質し、それが当該企業の中長期的な戦略と合致しているのかどうかを見極めるのが、取締役会です。

 その際、現職のCEOや社長の意見をどこまで尊重するのかは、これまでの実績が大きく影響するでしょう。短期のみならず長期的にも成長を実現した経営者が次にバトンタッチする場合、その言葉には重みがあります。取締役会といえども、そう簡単に反対できません。

 一方、満足な結果を残せなかった社長の場合、はたして傾聴に値するのかどうか。一般的には、あくまでも参考意見として伺っておき、最終的には、取締役会なり指名委員会が公正に判断すべきです。現実に、オムロンや花王など、素晴らしいシステムができている企業があります。

 東証1部上場企業の半数近くが、社外取締役を3人以上選任する、または取締役会の3分の1を占めるようになりました。それに対し、宮内さんは「取締役会とりわけ社外取締役が本来の役割を果たしておらず、ひいてはそれが日本企業の競争力に累を及ぼしている」と指摘されています。社外取締役の本分とは何でしょう。

 一言で言えば、CEOや社長がやっていることを「冷たく冷静に見る」ことです。経営陣がいまやっていることは中長期的な成長に本当につながるのか、おかしなことをしていないか、このまま任せておいていいのか、常に疑いの目を持って見続けるのです。そして疑問に感じられる点があれば、徹底的に問い質し、はっきりするまで説明を求める。

 この時に求められるのは「健全な疑念」であり、大して準備もせずに会議に出席して、際立った発言や質問もせず、議事録にただサインするだけの“ラバースタンプ”は必要ありません。

 こうした健全な疑念が真剣に議論される取締役会をつくるには、社外取締役の選び方について見直すべきです。取引先や経営陣の知り合い、名の知れた人たちにお願いしたり、経営者が実質的な任命権を握っていたりするようでは、モニタリング機能など望むべくもありません。やはり、独立性と中立性が担保され、経験と見識を兼ね備えた指名委員会が必要です。