すべての株主は
平等ではない

 コーポレートガバナンスは、「株主が企業の所有者である」という会社法を前提としています。しかし、それが強調されるあまり、バブル崩壊以降、株主主権、株主価値経営が金科玉条になり、短期主義(ショートターミズム)やROE経営などが一般化してきました。

 短期主義が強まった最大の要因は、やはり株式市場にあります。経営者は株主に評価されるようと日々業務を遂行しているわけですが、中長期的な成長を重視する株主ばかりではありません。

 株主と一口に言っても、少なくとも3種類に分けられるのと思います。

 1つ目は長期保有の株主です。企業が成長していけば、自分の利益も増えると考えており、じっくりと付き合おうという株主です。言わば経営者と同志であり、投資家本来の姿といえるでしょう。

 2つ目は、目先の利益を追求する短期志向の株主です。できるだけ短期間で効率よく利益にあずかりたいので、経営者にそのように要求します。物言う株主は、えてしてこちらのタイプで、議決権を行使して経営に口出しします。

 最近では真面目な提案も増えてきたとはいえ、企業価値の長期的な向上にはあまり関心がないようです。事業再編や自社株買いなど、あれこれ要求して、株価が上がったとたん、売り抜けておしまい。これは本来の投資ではなく、単なるマネーゲームです。

 そして3つ目は、株を黙って買って黙って売る株主です。実は、経営者が一番に憂慮すべきは、このタイプかもしれません。経営者と株主との間に緊張感が生まれる間もなく売却されるのは、まことに悲しい出来事です。株価が低迷するだけで、成長に向けた動きが生まれてこなくなってしまいます。

 ある時点だけを切り取って見れば、皆同じ株主ですが、3者を一緒くたにするのはおかしいのではないでしょうか。たとえば、長期保有の株主には議決権を増やし、短期保有目的の株主は制限するといった棲み分けはあってしかるべきです。

 トヨタ自動車が2015年7月に、少なくとも5年間売却できないAA型種類株式(非上場株式)を発行したように、多くの企業には長期的な株主を増やしたいとの思いがあります。

 ヨーロッパでは、長期保有の株主と短期保有の株主との間で、議決権に差をつけている国があります。たとえば、2014年3月に制定されたフランスのフロランジュ法では、2年以上保有された株式の議決権を2倍以上にすることが定められています。

 IT業界などでは、創業者が保有する株式はそれほど多くなくても、議決権が過半数以上になるように設定された種類株式を持つことで、長期的な視点や継続的な研究開発投資を担保している例がけっこうあります。経営者としては、やはり長期保有の株主と同じ目線で経営していくべきです。

 こう申し上げると、株主平等の原則に反するなどと批判されますが、本当の意味での平等を考えるならば、名ばかりの株主平等を疑い、一時点の株式保有数ではなく、ある程度の期間で累積的に見るべきです。

 オーナー企業が強い理由の一つもここにあります。大株主であるオーナーが誰よりも永続的な成長を望み、経営に深くコミットする以上、短期主義に陥ることは考えにくい。経営はロングランなのです。サヤ抜きを狙うマネーゲームに振り回されてはいけません。