まず白地を探して
入り込め

 リソースベーストビューを提唱したバーガー・ワーナーフェルトの夫人であり、ポーターの同僚でもあるシンシア・モンゴメリーは、ポジショニングビューとリソースベーストビューは相互に補完する関係にあると述べています。

 ビジネスの現場では当たり前のことです。現実的には、市場ポジションと経営資源の両方を見る必要があるという考え方に落ち着くはずです。

 とはいえ、それぞれに長短があります。たとえば、新規事業に乗り出す際、リソースベーストビューで考えると、既存事業とのシナジーや隣接分野への進出とか、自社の強みである経営資源や組織能力の活用とかに傾いてしまいがちです。

 しかし、ジェフ・ベゾスがアマゾン・ドットコムを創業した時、そのための経営資源や能力を何か持っていたでしょうか。そもそもは投資銀行家ですから、書店業にしてもネットビジネスにしても、専門的なノウハウなどなかったはずです。おそらく人並み外れた情熱と、この領域を切り開けば絶対パイオニアになれるという確信、それくらいしか持ち合わせていなかったでしょう。

 新規事業やイノベーションには、これが重要なのです。前人未踏の白地(しろじ)──ブルーオーシャンではありません──の領域を他者に先んじて見つけ、とにかく参入し、試行錯誤しながら学習を繰り返し、ノウハウを獲得し、参入障壁をつくり上げる。スタート時点ではなく、事後的に経営資源が蓄積され、それが競争優位になります。

 その意味では、白地の領域で事業を始める前に、競争優位を確実にする経営資源がなければ進出しないという意思決定を下すのは、適切ではありません。必要なのは、他社よりも学習能力が高い組織を持つことくらいでしょう。しかし、リソースベーストビュー的な思考を墨守すると、白地に進出するタイミングを逃したり、既存事業の近傍のみを探して新しい領域を開拓できなかったりといった問題が生じる可能性があります。

「メカニズム解明法」が
深い思考をもたらす

 以上のお話を伺っていると、ビジネスリーダーたちがその思考様式やマインドセットを変えなければ、事は始まらないようです。著書『経営戦略の思考法』では、合理的選択理論で考えるノルウェーの社会学者ヤン・エルスター、「第三の道」を提唱したイギリスの社会学者アンソニー・ギデンズ、「コミュニケーション論」で知られるドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスなどの研究を踏まえて、思考法を3つに大別しています。

 次の3つの思考法について理解することで、どのように戦略を考え、練り上げていくべきなのか、その基本姿勢が見えてくるのではないでしょうか。

 ●カテゴリー適用法
 ●要因列挙法
 ●メカニズム解明法

 メカニズム解明法に基づく経営戦略思考について詳しくお話しする前に、それぞれについて簡単に説明しておきましょう。

 カテゴリー適用法とは、ある現象をより一般性の高いカテゴリーの一例として位置付けて説明を試みる思考法です。要因列挙法とは、ある現象を引き起こしたと考えられる要因一つひとつを洗い出し、網羅的に検討する思考法です。

 これら2つが静的(スタティック)かつ単純であるのに対して、メカニズム解明法は、さまざまな要因や人々の行為の相互作用に注目し、これらが複雑に絡み合い、時間の経過の中で動的(ダイナミック)に変化していく状況の背後にあるメカニズムを解明する思考法です。