経営統合の実務においては、「統合推進室」が現場との調整を進めていると聞きます。先ほど挙げられたDTKプロジェクトはその一環だと思いますが、進捗状況を教えてください。

 DTKプロジェクトのメンバーは、現場をよく知る中堅幹部層(次長、副部長クラス)で構成されており、スタートから半年以上が経った現在、着実に進んでいます。業務システムを一本化し、業務プロセスそのものの改革や働き方改革を進めることがミッションですので、拙速に進めるのではなく、ある程度時間をかけ、現場の意見を取り入れながらやっています。

 DTKという言葉には、時代が大きく変わる中で、さまざまな課題に直面しても、みんなでとことん議論し、「だったらこうしよう」との柔軟な発想で解決策を考えて対応していこうという思いが込められています。よって、実際の現場で働く社員の意見を重視しています。またDTKプロジェクトと両輪となるのが、職場の代表がそれぞれの現場の意見を持ち寄り、経営陣と直接対話する「Nextフォーラム」です。すでに2回実施しており、いま3回目を企画しているところです(2019年12月現在)。

 また、昨年11月にリリースした新中期経営計画(2020~22年度)に対する社内意見交換会もかなりの回数で予定しています。私もできる限り出席して直接語りかけ、社員と双方向でコミュニケーションが取れるように、質疑応答の時間を長く取っています。経営方針を伝えるだけでなく、対話を通じて想いを共有し、理解を深めてもらいたい。その理由から実施しているのです。

 経営体質の違いを超えて、社員から活発な意見は出ていますか。
 非常に活発です。やはり一番多いのは、化石燃料を扱う企業としての将来性に関することですね。気候変動問題等に関する課題をしっかり受け止め、我々に何ができるかを考えて発信していかなければなりません。

 特に日本では人口減少がすでに始まっていますし、自動車業界でもEV化がどんどん進んでいくでしょう。その結果、我々の主力商品である石油の国内需要は10年後には3割減、20年後には半減する可能性があり、当社はまさにいま、事業環境の激変に直面しようとしています。それゆえ、この問題にどう対処していくのかと本気で問うてくる社員たちに、経営の思いや方針を丁寧にしっかりと伝える責任があるのです。

 また社員たちからは、企業理念や人材育成についての質問や意見もよく出ます。出光は純日本を出自とし、今年で創業109年を迎えますが、14年前に上場するまではプライベートカンパニーとしての歴史が長い会社です。一方、昭和シェルは世界メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルの傘下で、日本で100年以上の事業実績を持つ会社です。両社は生い立ちや歩んできた歴史が違うわけですから、風土の違いがあるのは当然です。

 むしろ私は、社員からこうした屈託ない意見が出ることは、非常にいいことだと思っています。みんな不安を抱えているのに誰も意見を言わないで黙ってしまったら、真の融合は実現しませんから。少しでも違和感を持ったなら、とにかくそれをお互い口に出してほしいのです。そうする中で新たな気づきが生まれ、コミュニケーションが密になって、みんなで前に進んでいけます。いまの違和感はいまだからこそあるものであり、将来の財産になる。陰で愚痴を言うのが一番よくない、それだけはしないようにと、社員に話しています。

 気候変動問題が切迫したいま、エネルギー業界にとっては事業環境が激変する大変な時期ですが、逆に融合や改革が進めやすいという面もあるのでは。

 非常に的確なご指摘です。やはり大きな変化があるからこそ立ち向かい、次の未来を築いていく必要があります。

 もちろんCO2問題は非常に大きな課題ではありますが、逆に言えば、当社はCO2を多く扱ってきた会社でもあります。つまり、CO2にどう対処するかについてのプロフェッショナルでもあるのです。我々は「サーキュラービジネス(注2)」と言っていますが、たとえばカーボンリサイクルのようにCO2を回収しリサイクルするなど、さまざまな対策技術を開発しています。
注2)サーキュラービジネスには、「カーボンリサイクル」や「廃棄プラスチックの樹脂原料化」などがある。前者は、メタノール合成(CO2と水素でメタノールを合成)、炭酸塩化(廃棄物カルシウムとCO2を反応させ炭酸塩による高付加価値素材化)、人工光合成(太陽光を利用しCO2を炭化水素化)などの技術で、CO2を吸収しリサイクルさせる仕組み。後者は、製油所の分解装置を活用して廃プラを再生する技術のこと。

 また、石油はCO2を大気に放出するから環境によくないとされていますが、実は石油が持つエネルギーの密度や効率性はとても高いといわれています。今日の文明生活を支えている以上、再利用やCO2制御がもっと進めば、石油の使い道はいまよりも大きくなります。逆境を好機ととらえて、ビジネスチャンスにつなげていきたいと考えています。