「レジリエントな企業体」に
向けた3つの改革

 ここからは、「レジリエントな企業体」となるための3つ(人材/体制/考え方)の改革について伺います。まず「人材」についてですが、どのようにして社員一人ひとりのモチベーションを上げ、困難に立ち向かう人材を育成していくのでしょうか。

「レジリエント」という言葉は、時代の環境変化にしなやかに対応しながらも、困難をはねのける強靱な企業体をつくりたいという思いで使っています。もともと出光も昭和シェルも「人の力」を大切にしてきた会社であり、これからも「人が中心の経営」を実践し続けていきます。国内外を問わず、すべての事業の根幹にあるのは「人の力」です。苦しい時も大きなリストラをしてこなかったため、優秀な社員がしっかり定着して仕事をしてくれていますし、事業を通じて人が育っていれば、これから先どんな環境変化があってもそれを乗り越えることができると、私は確信しています。

 事業を通じて人を育て続けるためには、新たなビジネスの創出が必要です。今年1月に新設した「デジタル変革室」は、働き方改革の推進にもつながるコア事業のデジタル化と、デジタルを活用した新ビジネスの創出を目指しています。そのトップには、大きな実績のある人材を執行役員として外部から招聘しました。既存の情報システム部門と連携しますが、その枠から一歩踏み出し、最先端のデジタル技術を活用した新たなビジネスやサービスの創出という観点で取り組んでもらいます。

 それとも関連しますが、次世代事業の創出に注力するために、昨年11月に「Next事業室」もつくりました。これまでも経営企画部内に新事業探索プロジェクトを設置するなど、社員のアイデアを事業につなげる活動もやってきました。ですが、いずれもボランタリーな活動になってしまい、せっかくの経験やノウハウが人事異動などで雲散霧消してしまうこともありました。そこで、社内にノウハウや知見を蓄積し横断的な活動をするために専任の担当者を置き、組織化しました。

 我々のリソースを活かした新規事業の切り口を探索する中でしなやかに変化に対応し、失敗や困難があってもはねのけることができるレジリエントな人材も育成できると考えています。

 次に「体制」ですが、昨今ではESG(環境・社会・ガバナンス)を明確に意識することが求められます。たとえば、再生可能エネルギーの多様かつ本格的な展開には、多額の先行投資も必要です。どのように取り組まれますか。

 経営統合した大きな意味がそこにあります。統合によってコア事業の付加価値向上を進め、そこから得られる大きなキャッシュフロー(2020~22年の3カ年累計で当期利益4800億円、償却費等4500億円、資産売却等1000億円の見込み)は財務体質を強化するだけでなく、未来の事業をつくるための投資余力にもなります。株主還元も総還元性向50%以上(~2021年度)とかなり充実させ、キャッシュアロケーションのバランスがしっかり取れる体制を整え、レジリエントな企業体へと進化していきます。

「考え方」については、出光流の普遍の理念に基づくと思います。「人間尊重」はもちろん入るでしょうが、「大家族主義」も入ってくるのでしょうか。

 考え方としては、何ら変わることはありません。もともと出光理念は普遍的なものであり、海外現地法人の社員にも理解され、長く継承されてきました。ただ経営統合した現在は、言葉で押し付けることがないように、出光固有の用語や言葉を私はあまり使わないようにしています。人間尊重や大家族主義の意味は、「人は、無限のエネルギー。」というスローガンに込めています。

 実は社内でも、「最近そういう言葉はどこへ行ったのですか」といった質問をよく受けます。「それは皆さんの胸の中にちゃんとあるでしょう」と私は答えています。理念を押し付けるのではなく、みずからが実践して範を示し、みんなで自発的に「人の力」を活かしていきたいのです。