「売上げ1兆円」という
壮大な目標を掲げた理由

 風土改革が始まってから3年後の2007年4月には、9年間の長期経営計画「Murata Way 2015」がスタートしました。会社が少しずつ変わり始めた中で、この長計はどういう位置付けだったのでしょうか。

 一連の風土改革がトリガーとなり、2006年から長期計画「Murata Way 2015」の策定を始めました。さまざまな改革が進むほど、「自分たちがどこへ向かうべきなのか」という道しるべが必要だと考えたからです。自分たちが目指す方向を、長い時間軸の中でしっかりと示す。それを従業員みんなと共有して、一歩ずつ前に進む。それが不可欠だと思いました。

 この長計では2015年度をゴールに見据えたのですが、その策定を進める中で、「売上げ1兆円」という目標が出てきました。ところがそれは、当社の過去成長率を踏まえるとけっして届きそうもない、実現不可能な数字でした。じゃあどうすればいいのか。こうなったら過去の常識を越えた、「非連続の成長」を目指すしかない。そう腹をくくったのです。会社が本気で変わろうとしているのを示す意味でも、あえて1兆円を掲げることにしました。

 この長計がスタートした3カ月後の2007年6月、兄の泰隆からバトンを受け継ぐ形で私が社長に就任しました。私自身に、この1兆円という壮大な目標を達成できるのか正直不安な部分もありましたし、しかも翌年のリーマンショックもあって、早々に1兆円ギブアップ宣言をする事態に陥りました。その後、2010年にあらためて長計をつくり直すことになったのですが、そこで考えたのは、新たな長期ビジョンを20~30代の若手メンバーでつくってもらうということでした。会社の未来を描くのであれば将来の主役たちに任せるべきだ、そう考えたのです。

 そうした創意工夫の成果もあってか、売上げ1兆円という目標と現実の乖離が徐々に縮まり、最終的には1年前倒しの2014年度に目標を達成することができました(図表2「村田製作所 『積層する経営』の軌跡」を参照)。これも、従業員一人ひとりが改革の当事者として懸命に頑張ってくれたおかげです。

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