圧倒的に高い顧客からの満足度

 フロント業務を障がいのある社員に委ねたことによって、どのようなことが見えてきましたか。メリットとデメリット、その両方をお聞かせください。

 ひと言で言えばメリットしかないと考えています。まず、社員の定着率が上がりました。インタビューやマッチング業務を行う社員は在宅勤務なので、通勤の負担が軽減していることが一つ。もう一つ、これは社員へのヒアリングから分かってきたのですが、多くの人が高いモチベーションを持って働くことができているということです。障がいのある人たちは、健常者と比べて仕事を見つけるのが難しいという現状があります。中には、50社以上にエントリーしたけれど働くことができず、アデコビジネスサポートで初めて社員として働くことができた人もいます。そんな苦労を重ねてきた自分が、他の人が仕事を見つけるサポートをしている──。そのことに大きなやりがいを感じるという人がとても多いんです。

 さらに具体的な成果として特筆すべきは、NPS(ネット・プロモーター・スコア)です。NPSはご存じの通り、顧客に対して「その企業のサービスや製品を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか」といった質問をして、0から10の11段階で評価をしてもらう指標です。推奨者が多ければ結果はプラスになり、批判者が多ければマイナスになります。人財サービス業界のNPSは残念ながらマイナスで、アデコも平均は上回っているものの決して高い数値とは言えません。

 しかし、アデコビジネスサポートのマッチングチームのNPSは非常に高く、プラスとなっています。求職者のコメントを見ると、「こんなに熱心に私の話を聞いて、仕事紹介をしてくれようとした担当者は初めて」といった声が多数寄せられています。これは大きな発見でした。

 求職者は、電話で話している相手が健常者か障がい者かということは分からないわけですよね。

 もちろんです。つまり、バイアスは一切ないということです。恐らく、障がいのある社員は、自分が仕事探しで苦労した経験がある分、本当の意味でユーザー目線に立つことができているのだと思います。

 求職者には満足していただける。マッチングがスムーズに実現するのでクライアント企業にも喜んでいただける。業務に携わる本人たちも達成感とやりがいがある。まさに「三方よし」が実現しているわけです。

 障がい者が担えるのは単純作業を中心とするバックオフィス業務だけである──。そんな先入観を覆す取り組みと言えそうですね。

 そう思います。やってみてよく分かったのは、障がいがある社員がフロント業務を担う場合でも、通常のマネジメントの仕組みの中で十分にサポートできるということです。もちろん、在宅勤務に必要なハードウエアやソフトウエアへの投資は必要ですが、それも決して大きなコストでありません。

 となると一方で、「なぜ特例子会社での雇用なのか。一般社員と同列の雇用でもいいのではないか」という疑問も出てきますが……。

 もちろん、アデコの社員として雇用することは可能ですし、業務によっては特例子会社から出向いただくケースもあります。それによって雇用率が変わるわけではありません。あえて特例子会社での雇用としているのは、より安心して多くの方に応募していただきたいという採用戦略上の問題からです。

 障がい者の立場に立ってみれば、特例子会社にはさまざまなサポート体制が整備されていて、安心して働けるというイメージがあります。そのため、企業選びへの心理的ハードルが下がり、結果として多くの人が応募してくれるようになる。それが特例子会社で雇用している理由です。一般の企業でもそうした環境が整っていることが当たり前という認識が広がれば、こうした対応は必要でなくなるでしょう。