そのためのアドバイスはありませんか。

 グローバル能力構築競争という新しい局面を迎えて、まず自社の周りのアーキテクチャの状況を把握してみることから始めてみては、どうでしょう。私は以前から、「インテグラル・モジュラー・マトリックス(注3)」を使ったアーキテクチャの戦略分析を各所で使ってきましたが、それなどが一つのやり方です。

注3)詳細は、藤本隆宏『日本のもの造り哲学』(日本経済新聞社)を参照。

 クローズド・アーキテクチャが続くと予想される業界であれば、そこでは能力構築能力の真剣勝負になりますから、トヨタのように組織能力の徹底的な強化、生産性や技術力の向上に愚直に取り組むことが必要です。

 一方、日本企業が不得手とするオープン・アーキテクチャの世界では、アメリカ経営学が礼賛してきたプラットフォーム・リーダーになれるのはごく一握りの企業にすぎないという現実を認識すべきです。そのうえで、こうしたオープンな世界でもしたたかに生きていく強い補完財企業、たとえば比較的小規模だが強力な、中クローズド・外オープンの事業を多数育てていく。

 結果として、まさしくプラットフォーム・リーダーになれれば、それはそれで素晴らしいことですが、初めからそれを狙っていくのは風呂敷を広げすぎというものです。まずは、日本のものづくり現場ならではの高い技術力と組織能力を最大限活用し、大規模ではなくてよいので、そこそこのサイズの高収益事業を確立していくのが現実的な戦略ではないでしょうか。

 言い換えれば、アメリカのオープン・アーキテクチャ業界でのプラットフォーム企業の成功譚から学ぶことは少なからずあるとはいえ、それはあくまでも参考に留め、自国の企業、産業、現場が背負ってきた歴史を踏まえつつ、自社の強みと弱みを把握したうえで、身の丈に合ったアーキテクチャ戦略と能力構築の地道な努力の組み合わせで勝負すべきでしょう。

 より具体的には、オープン・アーキテクチャでもポジショニングがよく、比較的コンパクトな高付加価値事業を増やし、それを「戦うマザー工場」が支える。そこから組織能力を移転し、海外にも強い現場をつくり、グローバルに付加価値と利益と雇用のバランスを図るのです。それが、オープン・アーキテクチャ世界でそれなりに繁栄し、日本企業の「グローバル長期全体最適」の経営にもつながっていくことでしょう。

*つづき(第3回)はこちらです


  1. ●聞き手・構成・まとめ|岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)