場合分けと中庸の大切さをあらためて痛感しました。

 以上で申し上げてきたように、21世紀は、一方では情報処理能力が爆発的に拡大し、他方では社会的・地球的制約がより厳しくなり、この両方のトレンドが複雑に絡み合って進んでいく時代です。その意味では、20世紀以上に「めんどくさい世紀」になりそうです。

 ICT万歳の技術楽観論だけでは済まず、他方では、地道にやらなければいけない課題が山積することでしょう。社会全体、地球全体で見ても、成長と格差、統合と分断、平和と紛争、安定と崩壊などが同時に起こりうる、複雑な世紀になりそうです。

 したがって、21世紀は、めんどくさい複雑な設計の製品やサービス、システムをまだまだ必要としています。ですから、日本の産業や企業は、歴史的に創発してきた多能工のチームワークを持ち味とする「良い現場」をできるだけ残し、それらの統合型現場のチーム設計力やチーム生産力、チームサービスの現場力を鍛え続け、「良い設計の良い流れ」で複雑な物財を正確に速く安くつくり、複雑なサービスをこなすことを持ち味とし、そのストーリーをブランド化し、世界に発信し続けるべきでしょう。

 その結果、「製造業であれサービス業であれ、めんどくさい設計や生産は日本にやらせれば間違いない」との評判を勝ち取り、輸出も観光も含め、世界中から複雑な製品やサービスの注文が寄せられる国にする。それが、今後10年、20年における、日本という中型国家の一つの目標となるのではないでしょうか。現実には、すでに大半がそうなっているとはいえ、これを崩すことなく、世界へのアピール力、ブランド力をいっそう高めていくことがポイントです。

 能力構築と需要創造の地道な努力により利益と雇用の両立を目指す「良い現場」を全国各地にできるだけ多く残し育てること──今後においても、これが日本の産業政策の基本形でしょう。これが、分断を超えて、社会の安定にも寄与します。その際、現場や現場指向企業に要求されるのは、これらの努力を怠ればグローバル競争に負けて消えるという危機意識と、「やれば生き残れる」という希望だと思います。私が知る限り、全国の良い現場はそういう意識で動いてきたと思いますし、これからもそうだと期待します。

 そのためには、経営者の方々は、現場の能力構築に対する深い洞察、世界規模での有効需要の創造、この2つに同時に取り組む必要があります。大企業であれ、中小企業であれ、あるいは政府であれ、21世紀のグローバルリーダーに必要なのは、「現場も地球儀も頭に入っている」ことではないでしょうか。【完】


  1. ●聞き手・構成・まとめ|岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)