海外拠点の幹部社員は
半数をローカル人材に

 今後、グローバル展開を推し進めていくうえで、デンソーが行ってきた人づくりの手法やモノづくりの志が、はたして文化や国民性などが異なる海外で受け入れられると思いますか。

 私はかつて当社が買収したイタリア子会社の社長となり再建を任されたことがあります。大赤字なうえに経営体質が旧く、継続が危ぶまれるほどの厳しい経営状況でした。再建のために行ったことの一つは、問題に徹底的に向き合ったことです。経営の情報を開示し、職位にこだわらず、多くの社員と徹底的に話し合いました。会社の外での“飲みニケーション”も多く、ワインは浴びるほど飲みました(笑)。

 そして、方向性を決めたら、後は社員たちを信用し尽くし、任せ切りました。時にはトラブルが起きて胃が痛むようなこともありましたが、どんなに気になっても口を出さず、見守り続けました。頻繁に現場へ行き、社員を鼓舞し続けました。すると、任せられた社員は奮起し、次第に社内の雰囲気が変わり始めました。

 こうした経験を通じて、経営者の大きな役割の一つは、社員たちの秘めた情熱に火をつけることなんだと学びました。ご質問に答えるならば、国や文化が違えども、人の情熱は変わりません。そこに火をつけるプロセスが違うだけだと思います。

 国内外の技術者や技能者たちに「君たちは何をやりたいか」と聞くと、「こんなロボットをつくりたい」とか「こんな認識技術を開発したい」とか言ってきます。実際、多少の予算と小さなラボを与えて、「それじゃあ自分たちでやってみろ」と挑戦させているのですが、彼らは本当に目を輝かせて開発に取り組んでいます。任せる勇気、育てる愛情、見守るゆとりが重要だと思っています。

 制度面ではどのように人づくりを後押ししていくのでしょうか。

 当社では2016年1月にグローバル共通人事制度を導入しました。国内外社員を同じ等級制度の下、同じ基準で公正に育成・評価します。これにより海外拠点の幹部の外国人比率をいまの25%から50%に引き上げる予定です。幹部人材を育成すると同時に権限委譲も進め、各地の顧客の声をしっかりと吸い上げるとともに、経営の意思決定のスピードを上げる体制を構築したいと考えています。

 幹部の外国人比率をいつ頃までに5割へ引き上げる予定ですか。

 地域によって一気に変える拠点もあれば、育成までまだ時間を要する拠点もありますが、2025年までに達成したいと考えています。