会社は社会の公器という話がありましたが、先日、三菱グループのトップにインタビューした時、三菱の企業活動方針の「三綱領」、所期奉公、処事光明、立業貿易が話題に上りました。三綱領は1930年代に4代目社長の岩崎小彌太氏が制定したものですが、かつて所期奉公は日本国へのご奉公であったが、我々は各国への奉公を目指すと、そのトップは話されていました。三菱商事はどうあるべきとお考えですか。

 三菱商事の事業活動は、会社自身の繁栄と同時に、日本にとってもプラスをもたらすものでありたいと願います。海外で展開する事業においても、当該国における当該国のための事業が、我々のビジネスでも増えてきています。その国のためにならないなら、存在する意味がない、これが真理だと思います。ただ、その国のためだけに尽くすのかというと、そこまでは割り切れていません。

 その国で得られるリターンの一部は日本に還流され、日本の消費者、生活者への貢献にもつながります。事業を通じて、当該国に対してだけでなく、日本に対しても社会価値、環境価値、経済価値の3つを同時に実現したいと考えています。

営業の現場や派遣先企業で
40歳までに経営人材を育てる

 事業経営に踏み込むと、生産管理、労務管理、コスト管理、マーケティング、在庫管理、リスク管理などの責任を負うことになりますが、事業経営に対応ができる人材育成をどうされているのですか。

当社では、たとえば営業部門に配属された場合、5~10年、まずはそこで仕事を覚えて、その道のプロになることに専念してもらいます。一つのことに没頭することが大切です。入社1年目から自分のキャリアパスしか考えない人は、結局大成しません。

 この間、関係会社に行くこともあるでしょうから、労務、生産管理など、7~8割のことは学べます。当社は多くの事業投資先を抱えており、経営人材を育成する場はどの会社よりも多くあると思っています。このことを自覚して、若い社員の成長に期待しています。

 残りの2~3割の能力、スキルはどのように身につけるのですか。 

 その後のバリエーションはいろいろあると思いますが、実際に経営に当たらせて実践させることが必要です。40歳には一人前に経営ができる人材に育って、残り20年間、三菱商事グループ、社会に貢献してもらいたいと考えています。

 ローソンや伊藤ハムなど、三菱商事出身の経営者が話題になりますが、メディアで取り上げられる人材だけが優秀というわけでなく、ほかにも関係会社に出向している経営者、経営幹部にも立派な人材が数多くいます。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングに20人ほど、関係会社のジーユーには副社長を含め複数の人材を派遣されていますが、持分法適用会社ではありません。こうしたケースの狙いは何でしょうか。

 タイとインドネシアで合弁事業を展開しており、ユニクロの柳井(正)さんから優秀な人材を派遣してほしいと依頼があって社員を出向させています。合弁会社には25%出資しているので、利益が上がればそこから配当金などで収益に貢献することになります。

 取引の面で三菱商事にプラスになっている部分もありますし、当人たちはそこで多くのことを学ばせてもらっています。一方的に協力するということではなく、お互いにウイン・ウインの関係です。

 商社に対する学生の見方に変化が起きています。最近の就職人気ランキングで商社は高い人気があり、ベスト10に6、7社の商社が名を連ねており、文系だけでなく理系の学生からの人気も高いようです。全産業を通じて、商社が注目される理由、背景をどのように見ておられますか。

 難しい質問ですね。商社といっても、以前とは機能もビジネスの中身もまったく異なっていますし、会社によっても目指すところが違っているため、一くくりで答えられない面があります。三菱商事についてお話ししますと、図らずも、当社は産業界で、いろんな意味でプレゼンスが強くなっているのかもしれません。

 プレゼンスが高いというのは、学生の皆さんからすると、あらゆる産業に参画していて、活躍の場がたくさんあると受け止めてもらえているからではないでしょうか。最近の学生は、社会に深く関わり、世の中の役に立ちたいという人が少なくなく、当社と社会との関わりが強くなっていることを評価してくれているものと受け止めています。