たしかに商社はさまざまな産業と接点を持って、ビジネスを展開していますね。

 商社では食糧やエネルギーなど、いろんな部署があり仕事に幅があります。他の産業、たとえばメーカーだと、自動車とか機械とか一つのことに集中して取り組みますが、商社では、ある部門に配属されると、その分野の川上から川下まで幅広い経験をします。

 商社内の他部門と連携すると、よりダイナミックな仕事、プロジェクトができるということもあるでしょう。他部署との連携で新しい価値を生み出していくことは、いま真剣に取り組んでいる分野です。

学生が働きたくなるような
人を育てる経営風土を目指す

 三菱商事にどのようなカルチャー、企業風土を根付かせたいとお考えですか。

 人がすべてだと思っています。したがって、潜在的な可能性を持つ優秀な人が三菱商事に入ってくれることが基本です。第一に三菱商事に行きたいと言ってもらえる会社でなければならない。誰にでも門戸を開いておくこと、そして三顧の礼をもって迎える。こうしたサイクルが、私が入社した時代からずっと続いています。会社の未来を切り拓いていくのは社員ですから、変化に対応できる人材が育つ環境の会社でありたいと思います。

 垣内さんご自身の就職活動はどうされたのですか。

 私が入社したのは1979年です。学生時代、弓道をやっていましたが、大学に入って弓道を始めたので、中学・高校からやっていた人よりハンディがありました。うまくなりたいとの一心で練習に励み、通常、3年で引退する部活も4年の卒業まで続け、弓道一筋に打ち込みました。

 当時、10月1日が就職解禁日だったのですが、10月4日からリーグ戦が始まるので、就職先を早く決めようと銀行と商社の4社に絞り込み、面接、試験を受けました。三菱商事は学生を平等に扱い、囲い込みのために時間を拘束することもせず、非常にていねいな対応でした。

 世界経済論を専攻していましたが、熱心な学生ではなかったので、難しいことを聞かれたら答えられません。ところが、面接官から学生生活に関する質問が続いたので話が弾み、難しいことは聞かれずに面接が終わり、幸運なことに、そのまま入社できました。

「変化への想定力」が大事だと、社員にメッセージを送られていますね。

 繰り返しになりますが、原料や製品の取引に関わるトレーディングだけではやっていけないと、事業投資を始めるようになり、創意工夫、経営力で事業価値を高めていく事業経営の時代になったと思います。

 常に変化、進化している中で、判断を間違えるとどんどん劣化するし、判断が正しいと発展していく、こうした違いが顕著になってきます。構想は間違っていないし、環境も間違っていないと判断した時は、とことんやり抜くことが大切です。

 成長の牽引が期待できる分野として、食品原料、ライフサイエンス、消費財製造、リテイル、自動車、電力事業、不動産開発・運用を挙げておられますが、三菱商事の強みを活かせ、形になりそうな事業は何ですか。

 先ほども申し上げた通り、資産ポートフォリオの入れ替え、事業の整理などの大原則を社内で示し、7つある事業グループでは、それぞれのキャッシュフローの範囲内でしか投資が実行できない状態にしていますので、各事業グループでは、粛々と事業の入れ替えを進めています。

 整理が一段落したら、10年先を見据えて三菱商事の収益のコアになるようなビジネスを育てていきます。そうした原型が中期経営戦略に掲げた分野から生まれつつあります。