具体的にはどのような取り組みを行ってきたのですか。

 2014年4月にはIT化推進のために「採用」「育成」「権限」「新規事業開発」「研究開発」のテーマで5つの施策を打ち出しました。

 先ほどお話しした「New RING」は、2014年にリニューアルしましたが、これは「新規事業開発」の施策です。また「採用」に関しても強力に推進しました。2015年春入社の新卒からウェブスペシャリスト職種を導入し、IT人材の採用を強化しました。その結果、2012年当時にはグループで約400人だったIT人材が、今年で約1700人になる予定です。

ビジネスモデルの変化に伴い
常に組織を新陳代謝

 かつて創業者の江副さんは「優秀な人材を採れ。事業は後からついてくる」として、採用に非常に注力しました。いまのリクルートが求める優秀な人材とはどういう資質を持った人なのでしょうか。

 一言で言えばアントレプレナーシップ(起業家精神)のある人です。具体的には、他人から要望されたり命令されたりしたわけではないのに自分で課題設定し、自分で道を切り開き、ビジネスを始めたり、改善したりしようとする人です。

 当社はこういう人たちの集まりです。もちろん、レベル差や得手不得手などはさまざまです。ゼロから1のビジネスを創り出す人もいるし、1から10に拡大することが得意な人、その両方ともできる人、あるいは日常業務の生産性改善が得意な人もいます。個々人のスキルによって花開く先は別ですが、これだけアントレプレナーシップのある会社は本当に稀だと思います。だからこそ、独立する人や、ゼロから1を創出するベンチャー企業に転職する人も多いのだと思います。

 おっしゃったように、リクルートは昔から退職者が多いことで知られています。ちょっと驚いたんですけど、創業から約57年の歴史の中で、プロパー入社して定年退職した人はわずか2人しかいません。さらにグループ全体の社員の平均年齢を見ると、2016年度末時点で33・5歳(注)で、10年前の31歳、20年前の31・4歳(一部契約社員〈CV職〉を含む)とほとんど変わっていないんですよね。

注)国内11社合計、正社員のみ、リクルートホールディングス執行役員除く。

 そうですね。当社は消費者の不便・不満・不安の「不」を解決するため、顧客企業と消費者の間で求人情報や住宅情報などをベストマッチングするマーケットプレースのサービスなどを提供しています。こうした情報のマッチングのビジネスでは、紙媒体からインターネット、もしくはPCからスマホなど、技術の進化に伴いビジネスモデルも変わるため、求められるスキルも5年、10年、長くても20年単位で大きく変わっていきます。

 一方で当社の場合、社員か否かという境界線が、一般的な会社に比べるとそれほど明確ではないんです。退職して起業した人が当社に出資を求めてくるケースもあるし、逆に事業に失敗して当社に戻ってくるケースもあります。

 今後のビジネスディベロップメント(事業構築)のあり方を考えると、この境界線はさらになくなっていくだろうと思っています。たとえば、あるビジネスに当社が出資や買収することで、事業ごとその人を雇用する、いわゆる「アクハイアリング」(買収〈acquisition〉と雇用〈hiring〉を組み合わせた造語で、人材獲得のために行う企業買収という意味)のようなケースもこれからは出てくると思いますし、その対象が当社を退職した人の企業という場合も出てくるでしょう。