明治学院大学大竹光寿ゼミのメンバーが1年強にわたり、ミリメーターに潜入。ブランド・ブックづくりを通じて見えてきた真のブランディングとは何だったのか、またこの体験は彼女・彼らの人生にどのような影響を与えたのでしょうか。大竹ゼミのメンバー4人の想いをお届けします。

うそ、社長さんと喋っちゃった!扉はいきなり開かれた

▲代表の粕谷孝史と工房にて。左から山川さん、岡部さん、粕谷、加藤さん、角野さん

明治学院大学で、ブランド論・消費者行動論について研究する、大竹光寿ゼミのみなさんがミリメーターのドアをたたいたのは2016年の12月。ミリメーターの基幹事業「オーダーメイドパンプスEoluna」が正式お披露目された頃でした。

山川 「大竹光寿准教授から『ブランド・ブランディング・消費の本質とは、作り手の“想い”である。机上では知り得ない“想い”を、現場で見て聞いてきなさい。そしてその結果を“ブランド・ブック”という形にまとめなさい』というご指示を受けました」
角野 「そこで、何社かに訪問のお願いをしたのですが、なかなか快いお返事をいただけず、行き詰っていました」
加藤 「そんなとき、たまたま角野がネットでミリメーターの記事を見つけたんです。『シューズカフェだって。見に行かない?』って。で、ふらっと」
角野 「普通に『カフェ』だと思ったんです。お茶を飲めるお店があって、ご興味あれば工房もどうぞ、みたいな。いや、間違ってないんですけど(笑)。だから様子を探るにはピッタリかな、と思ってビルの前まで行ったのですが、入り口がわからなくて」
加藤 「で、恐る恐る電話をしてみると、『はーい、どうぞー』みたいな感じで、気さくに工房を案内してくださいました。一通り拝見して、ブランド・ブックをつくりたい、とお話しすると、案内してくださった方が『粕谷さんどうします?』『いいんじゃないの?』って。え、粕谷さんって、社長さん?え、うそ、社長さんと喋っちゃった!って、内心だいぶ慌てました」
角野 「でも粕谷さんの話を聞くにつれ、『この市ヶ谷の小さな工房が世界を変えるかもしれない!』って、ものすごくワクワクしてきたんです」

我々のブランドを客観的にカタチにしていただける、というのはミリメーターにも魅力的にうつり、タッグを組むことになりました。

自分で自分のパンプスをつくる、特別な経験

▲革選びから計測、型紙づくり、裁断、縫製、吊り込み……。すべての工程を全員が体験した

ブランド・ブックをつくる過程で、大竹ゼミの皆さんにはご自身のためのパンプスを製作していただきました。

角野 「粕谷さんが『一度自分でつくってみると、第三者にはわからないものが見えてくるよ』とお誘いくださり、貴重な体験をさせていただきました」
岡部 「僕は男なので自分のパンプス、というわけにはいかなかったのですが (笑 )、職人さん一人ひとりの声を聞くことで、普段は感じとることのできない『モノへの愛着』を学びました」
加藤 「実際に自分でやってみることで、職人さんの作業へのこだわり、靴づくりへの『想い』がより深く伝わってきました。そして、オーダーメイドの靴を手に入れるということは、ぴったりとフィットする、という物理的な価値だけでなく、たくさんの『想い』がこもった『自分だけのものがたりが紡がれる』という、とても大きな価値に気がつきました」

実際にパンプスづくりの全行程を経験した彼女・彼らは、モノづくりの真髄に迫るべく、さまざまな方にインタビューを実施することにしました。

山川 「まず全社員さん一人ひとりにお時間をいただき、靴づくりへの『想い』をお聞きしました。とにかくその『想い』の強さを感じました」
岡部 「さらにブランドとは、愛用者の『想い』からも育つものではないかととらえて、 Nail Quickの経営者である、株式会社ノンストレスの坂野尚子代表取締役社長にお話を伺う機会をいただきました」
角野 「ミリメーターには『ちょうどいいサイズ』にとどまらないものがあったと。たとえば、坂野社長のことを考えてとりつけられたクッションだったり、店舗回りにもパーティーにも使えるデザインだったり、起業家としての魂だったり。『 Value for Money』つまり、高いものにはちゃんと高いだけの理由がある。それをいかに伝えていくのかがブランディングの役割だ、とのお言葉がとても印象的でした」

その他にもインタビューをしてその結果をまとめる、にとどまらない、思いがけない経験も待っていました。

岡部 「東京都主催の世界発信コンペティションの場に、革新的サービス優秀賞受賞の瞬間に立ち会えたことも忘れられません。けれども特に印象的だったのは、創立1周年パーティーで、一般のお客様に対して自分たちの活動をプレゼンテーションしたことです。職人の『想い』をどうお客様に伝えるのかにこだわり、学生の柔らかさと対社会を意識した硬さを掛け合わせて、僕らにしかできないプレゼンができたと思います」
加藤 「ミリメーターの『決して変わらない根本』や、『一過性ではない魅力』をお伝えできたならいいな、と思って発表しました」

目指したのは「ものがたり」。想いを紡ぐ1冊ができるまで

▲読み手に「ものがたり」として届けたい。左上から時計回りに目次、社の生い立ち、イメージカット、インタビューページ

作り手の「想い」を知った皆さんは、どのようにブランド・ブックの制作に臨んだのでしょうか。

岡部 「ミリメーターでは、おひとりずつ、じっくりお話を伺うことができました。これは小さな会社だからこそできた経験だと思います。この経験は大切にしたいと考え、『職人一人ひとりの“想い”をイチから 10まで紡ぐ』ブランドブックにしよう、と決めました」
加藤 「次に誰に向けてつくるのか、を考えました。さまざまな女性誌を手にしながら検討し、 20代後半から 30代の女性をターゲットに据えました。でも、ミリメーターの『あえてお客さまの年齢を聞かない』マーケティングを参考にして、 30代といっても実年齢ではなく、その方の生き方やファッションを考えた『気持ちのうえの』 30代としました」
角野 「続いてデザインです。『靴をつくるのはものがたりを紡ぐこと』から着想して、雑誌ではなく、物語らしいデザインを意識しました。左開きにするのか右開きにするのか、フォントは、構成は……。デザイン関係の本を大量に読んで、アイツは何を専攻してるんだ、ってくらい埋もれていました(笑)」
岡部 「タイトルやキャッチにもこだわりましたし、写真選びにも時間をかけました。あなたもシンデレラになれるというメッセージは確実に伝えたかったので、イメージカットを企画して撮影しました」
山川 「緑の背景が欲しくて公園に行って。でもどんな準備をしたら良いのかわかっていなかったので、椅子なんてなくて。足がつりそうになりながら、靴を履かせてもらうカットを撮りました」
加藤 「実際の作業は、ガントチャートっていうんですか?行動計画を立てて進めました。ところが何から手を付けていいかわからないし、何をしなきゃいけないかも手探りで。ちょっと進んでは引き直し、進んでは引き直しの繰り返しでした」
山川 「週に 1回ゼミの中で進捗を確認して、次に何をするのか検討して。こういった経験も今後社会人になったときに役立つのではないかな、と思います」

ブランド・ブックの完成は卒論提出日に重なりました。ゼミではどのような評価を得たのでしょうか。

角野 「就職活動中は休止せざるを得ず、並行して卒論を書く必要もありまして。ブランド・ブックづくりには、当初の予定をはるかにこえ、まるまる 1年を費やしました。それでも最終的にカタチまでもっていけたのは、ゼミ内 6チームのうち、 2チームでした」
加藤 「提出したら先生には『作り手の想いが詰まった、良いものができましたね』って言われました」

活動の最初の目的であった、「ブランドの本質であるが机上では知り得ない、作り手の『想い』を、現場で知る」ことは、間違いなく達成できたようです。

誰かの心に「ひっかかる」ブランド・ブックになったらいいな

▲パンプスを履くようになったという山川さん(写真左)と、モノづくりのプロセスに対する経験値があがったという加藤さん(写真右)

ミリメーターの扉をたたくところからはじまり、パンプスづくり、インタビュー、プレゼンテーション、そしてブランド・ブックづくり。これらの体験をした彼女・彼らは、将来について何を考え、その貴重な経験をどのように活かしていきたいと考えているのでしょうか。

山川 「もう単純にパンプスが好きになりました!これまで自分の足にあうものなんて存在しないと思ってスニーカーばかり履いていたんです。でも履けるパンプスがあるんだという驚きを通じて、靴に興味を持つようになりました」
角野 「私はブランド・ブックづくりを通じて、表現するおもしろさに目覚め、就職活動ではデザイン系の会社も視野に入れました。紙媒体ではないのですが、デザインとは、を引き続き学んでいければなと思っています」
加藤 「私は Web媒体の企業に進むことになりました。取材した結果を Webページというモノにしていく、そういったプロセスや心構えのようなものは、この経験がそのまま役立ちそうだな、と期待しています」

PR Table上にある別の記事(社員紹介記事)は、このブランド・ブックをベースにしています。

このほかにブランド・ブックをどのように展開していったらよいと、彼女・彼らは考えているのでしょうか。

角野 「具体的な使い方は考えていなくて、ミリメーターさんが自由に使ってくださって構いません。ただ、ミリメーターを知らない方にはもっと知りたいと思ってもらえるような、もう既に知っている方にはもっとファンになってもらえるような、そんなツールになったら嬉しいです」

加藤 「今の時代、何か困ったことがあったら検索して、その検索結果で行動するのが当たり前です。でもこの1冊があえて『紙』であることで、偶然誰かの目にとまり、その誰かの心に『ひっかかる』ものであったらいいなと願っています」

大竹ゼミのメンバーには、ブランド・ブックの制作を通して、真のブランディングについて考えるとともに、作り手の想いをあらゆる角度から体験していただきました。

「未来のモノづくりで1ミリの幸せを提供します」をコンセプトとする、我々ミリメーターとしては、その1ミリにかけるプロ意識を、未来ある学生たちに知っていただけたことが、大きな収穫だったように思います。