株式会社ポニーキャニオンが手掛ける「地域“共”業事業」は社内横断のスタッフで構成されたプロジェクト・チームからスタートました。数々のアーティストやクリエイター、そして自治体とともにつくり上げる映像や音楽を主体とし運営する事業はエンタメ業界唯一無二であり、注目を集めています。地域は、そして地方はエンター

エンターテインメントのプロフェッショナルが手掛ける「地域“共”業事業」

▲エリアアライアンス部のメンバー

ポニーキャニオンのエリア・アライアンス部は、弊社がこれまで培ったエンターテインメント事業での経験やノウハウを生かし、地域との連携によるエリア活性化を目的とした事業を推進しています。

「地域“共”業事業」を掲げるこの取り組みがスタートしたのは、2015年。2~3年目の若手を対象とした社内の研修プログラムがきっかけでした。

関わったのは当時入社2年目の営業担当者・黒瀬健太郎。

黒瀬 「研修プログラムは起業。その中に自治体公募案件への応札(注:コンペに参加すること)、というものがありました。そこで、岐阜県で募集されていた『関ヶ原の戦い』をテーマにした観光プロモーション案件にチームで提案をしたんです。
入社してすぐ、CDや DVDの営業担当になって、それまで行ったことも見たこともないような地方のお店を訪問していました。東京から離れたことがなかった自分には、人の少なさや閑散とした駅前がさびしく感じられたんですよね。
その印象が強く残っていたので、何か新しい事業に関する企画をすると聞いた時、まずこの会社が地方のためにできることは何かを考えました。そこで、当社がこれまで築いてきたアーティストやメディアとのつながりを生かせば、都市部や海外からの注目を地方に集められるのではないかと思ったんです」

音楽や経理などさまざまなセクションから協力者が集まり、2015年には15人となったメンバーとともに、地域共業ワーキング・チームが立ち上がりました。

これまで手掛けてきたのは、大阪府の百舌鳥・古市古墳群の首都圏PR、三重県桑名市による首都圏に向けたプロモーション、埼玉県狭山茶のブランディング、埼玉県の関東東海花の展覧会など。プロモーション映像の制作だけに留まらず、まちのブランディングと発信に取り組んできました。

黒瀬 「私たちは映像をつくって終わりではなく、まちの良さを正しく評価してくれる人に届けるブランディングまで深く踏み込んでいます。
まちの魅力を伝えるアンバサダーも単純な知名度の高さではなく、その分野における知識の深い人を選び、時間を掛けて本物の良さを伝えることを重視してきました。
数年後に私たちの手を離れても、本物を求める人が自然に集まるようなまちづくりを目指して事業を進めています」

感情を動かすコンテンツをつくりたいと、エンターテインメントの世界へ

▲経営戦略本部 エリアアライアンス部の黒瀬 健太郎

ワーキング・チーム発足当初からプロジェクトに携わってきた黒瀬は、東京で生まれ育ち、新卒でポニーキャニオンに入社しました。

安定したゼネコンへの就職を望んでいた両親とは反対に、学生時代から好きだったお笑いへの興味を捨てられなかったと話します。

黒瀬 「昔から友だちを笑わせたり、旅行の計画を立てたり、おもしろいことや人を喜ばせることが好きな子どもでした。ラジオで自分の投稿が読まれた時の高揚感も忘れられません。
その延長上にあったのが、人の感情を動かすコンテンツをつくりたい、エンターテインメントに携わりたいという想いでした」

入社後に配属された営業部では、大阪を拠点に地方都市を回った黒瀬。訪問先へ向かう電車やバスから見た何気ない風景に、強烈な違和感を覚えたと振り返ります。

黒瀬 「都市部では、人が友人や家族などと複数で歩いていることが多い。けれど地方へ行くとポツン、ポツンとしか人がいない。しかもひとりで歩いている……。そんな風に感じたんです。観光地と言われている場でも人がまばらで、“一緒に何かしようとか、どこかへ行こうといったワクワクする目的を持っていないのでは ”、と勝手に思い込んでいました」

一方、実際に足を運んだことで、地方にはまだ知られていない魅力がたくさんあることも知った黒瀬。この経験はのちに、“いつか行ってみたい場所”として、人の心に地方を印象付ける仕事につながっていきました。

入社4年目、黒瀬はワーキング・チームが正式にエリア・アライアンス部として創部したタイミングで専任となりました。“首都圏出身でありながら、驚くほど地方に詳しい”上司や同僚とともに、地方との関係を構築しています。

黒瀬 「私たちの強みは “外目線 ”。外にいる人間は地方の、また地域の何に魅力を感じるのか、といった客観的な目線を持っています。それを現地のパワーと掛け合わせて、地元だけでも、外からだけでもできない魅力を発信したいと思っています」

コンテンツ制作は未経験。でも、自治体との協業経験を武器に取り組む

▲経営戦略本部 エリアアライアンス部の平島 綾

2016年12月に中途採用で入社した、エリア・アライアンス部の平島綾。彼女は学生時代に培った語学や知識を生かし、中国と関わりの深い部品メーカーや広告会社での勤務を経験してきました。

平島 「前職は中国人や香港人向けの日本観光情報誌を発行する広告会社で、仕事を通して地方自治体と関わるようになりました。
今では海外からの観光客は珍しくありませんが、まだ “インバウンド ”という言葉を一般的に耳にすることがほとんどなかった 2011年頃のことです。
自治体に観光客を誘致したいという想いはあったものの、多くの場合、海外での知名度は低く、観光インバウンドの予算も今ほど多くありませんでした。
試行錯誤しながら日本の観光情報を発信することに取り組んできたのですが、会社の組織変更などがあったタイミングで、ポニーキャニオンと出会いました」

その後、自治体への営業経験を評価された平島は、ポニーキャニオンに転職。エリア・アライアンス部に加わりました。

アニメなどのエンタメ・コンテンツ制作については経験したことがないものの、「自治体と仕事をしてきた経験は生かせる場があると感じた」と振り返ります。

そんな彼女の強みは、“素人目線”だと言います。

平島 「エンターテインメント企業であるポニーキャニオンがこれまで発信してきた音楽や映像、イベントは、つくり手となるアーティストのファンや、特定のジャンルに関心が高い人に向けたもの。つまり、興味・関心をすでに持つ受け手に向けて制作することがほとんどです。
けれど自治体のプロモーションが対象とするのは、その地域を知らない人、知っていても興味のない人、また若年層やシニア、ファミリー、女性や男性といったおおまかに分けられた人たちです。
同じコンテンツ制作ですが、ターゲットや受け手が異なるので、発注者である自治体との連携は不可欠で、それによって作品の精度に大きな差が生まれます。
そこで、これまでエンタメ・コンテンツ制作の経験のなかった私の “素人目線 ”は役に立つと感じました。私は普通の人と同じ生活者として、“素人目線 ”を持って制作チームと自治体、受け手とのギャップを埋め、『協働』を促す役割を果たせたらと思っています」

変わり続けるエンターテインメントと個性ある地方を結ぶ柔軟性が大切

まったく異なる経歴と目線を持ちながら、ともに地方に向き合う黒瀬と平島。エンターテインメントと地方のこれからについて、黒瀬は、社外へ向けた想いを抱いています。

黒瀬 「この事業に関わった時から、いやそれより以前、お笑いに夢中になっていた学生の頃からずっと、“目立ちたい ”という想いは消えていません。ただこの事業がスタートしてからは自分でなく、関わる地方で目立ちたいという想いに変わりました。
マーケティングという土台からつくる “観光 ×エンターテインメント ”が少しずつ形になってきて、これからまだまだ新しいことに挑戦できる環境が、今はすごく楽しいと感じています。
ポニーキャニオンにはエンターテインメントという強みがあるので、将来的には自分たちが発信者となる、“箱づくり ”のような取り組みもできたらいいなと思いますね」

一方の平島は、社内でより多くの部署とつながっていくことを意識しています。

平島 「エリア・アライアンス事業についての理解が社内でも深まるにつれ、他部署との連携も増えてきました。自治体もそれぞれ特長があるので、お互いが持っているコンテンツを掛け合わせていくことで、より良いものがつくれると思っています。エンターテインメントにおいて幅広い選択肢を提供できるのはこの会社の強みなので、今後はもっと生かしていきたいですね」

エリア・アライアンス部を、「いい意味で、フレキシブルなミーハーが活躍できる部署」と話す平島。

ひとつとして同じではない地方の特色を、多様なジャンルのエンターテインメントと組み合わせ、さまざまな価値観と交わっていける柔軟性が求められていると言います。

黒瀬 「エリアとのアライアンスを行うということは、自治体との関係性が成功を左右する仕事です。プロモーションに関わる人たちと同じ “つくり手 ”として制作意識を共有し、地方のことを自分事として考えられる仲間と、事業を大きくしていきたいと思っています」

「会社の強みは存分に生かしながらも、自分たちもまた独立した部署として、アーティストやクリエイターが活躍できる場を広げ、地方とともに発展していきたい」。ふたりはエリア・アライアンス部の今後を、そのように描きます。

エリア・アライアンスの仕事は、舞台となるまちにスポットライトを当てること。ストーリーは集まる人の数だけ生まれます。