2019年3月に東証マザーズに上場したカオナビ。働き方改革を推進するシステムを提供する企業として、2019年7月に自社の行動指針も刷新しました。目指すのは日本の企業とはまったく異なる、生産性の高い北欧型企業です。さて、その違いは何か。代表の柳橋仁機が語ります。

目指すのは、人口が少なくても世界に通用する企業を輩出する北欧スタイル

日本の働き方は、猛烈にダサい──。誤解を恐れずいうと、僕はそう思っています。

終身雇用で会社に支配され、深夜クタクタになるまで働き、定年を迎える人生なんてカッコよくない。いまや誰も目指したくないのではないか?と思うのです。むしろ会社や個人はお互いに自立し、プロ意識を持って選びあえる関係がよいと僕は考えています。

いまの日本は人口がどんどん減っているにもかかわらず、ひとり当たりの労働生産性も低く、10年先の未来を考えるとかなり厳しい状況です。人口減少が避けられないなら、あとは生産性をあげるしかない。そこで海外に理想の働き方モデルはないかと考えました。

人口が少なく労働生産性の高い国はというと、軒並みヨーロッパです。ヨーロッパでは、人口1億人を超えるのはロシアだけ。ドイツとフランスは約8,000万人。さらに1,000万人以下に北欧各国が続きます。

企業単位で考えれば、僕のなかで北欧がもっともしっくりきました。北欧にはレゴやイケア、ノキアに代表されるように世界に通用する企業があり、労働力の「数」ではなく「デザイン」「ロジック」「しくみ」などとても洗練された付加価値で勝負しています。

さらにいえば、毎日午前中しか勤務しないワーキングマザーでも年収1,000万円というのは、北欧ではよくあるケース。デザイナーやマーケターなど突出したスキルがあれば、労働時間とは関係なく年収1,000万円や1,500万円でも稼ぐ方も多くいるそうです。

 ところが日本のワーキングマザーは、ほとんどが時短勤務を強いられ、仕事の内容も事務系に絞られるケースも多いです。個人の付加価値など評価していないようにも感じられます。

本来、本人に力があり成果が出せるなら、フルタイムで勤務できるかどうか、労働時間は関係ないはず。このあたりの感覚も北欧は優れています。

それならば、北欧型企業のような働き方を目指そう──

そんなことを考えていた2019年3月、カオナビは東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たします。そこで上場企業として社内外に、カオナビが目指す理想の姿を示すために行動指針を刷新したんです。

労働時間ではなく純粋に能力で評価される、洗練された働き方モデルへ

上場したからには、会社は継続的な成長を市場に約束することが大事。誰かの経験則やタレントによって会社の成長がけん引される状態よりも、“上場企業としての組織化”をより強固なものとしたい。「どのような企業でありたいか」を行動指針で明確にしたかったんです。

もちろん前提となっているのは、北欧企業の働き方。理想へ到達するには、日常の行動を洗練させることが不可欠。そこで今回はすでに社内に根づいている文化もあらためて言葉に落とし、明確な5つの行動指針として制定しました。

「ぎゅっと働いて、ぱっと帰る。」
人生は短い。だから時間ではなくアタマを使う。私たちはもっとも効率的に働き、人生を謳歌する。

「ちゃんと聞く、ちゃんと言う。」
肯定ファーストで聞く。率直に伝える。私たちは建設的で無駄のないコミュニケーションをする。

「そもそもなぜ?を考える。」
相手がなぜそれを求めているのか、本当に解決すべき課題はなにか。問題はなぜ起こったのか、解決するために最善な方法はなにか。私たちはなぜ?を考えるところからはじめる。

「スピードで勝負する。」
ビジネスは常に早いもの勝ちだ。私たちはすばやく判断し、すばやく行動する。

「顔と名前の一致からはじめる。」
一緒に仕事をする人のことを知らなければ信頼は生まれない。私たちは相手の得手不得手を知り、連携して、ひとりでは出せない成果を得る。

この行動指針の根底には、変な依存関係はなく「相互選択関係」の「プロ意識」をもった集団でいたいという思いがあります。組織が成長し続けるには、会社は社員に成長の機会を提供し、社員は変化することを約束する。つまり「ギブアンドテイク=相互選択関係」が大切だと思っているからです。

相手とは異なる自分の意見をいかに伝えられるか。それが今後の成長の肝

先ほどお伝えした5つの行動指針のなかで、①番の「ぎゅっと働いて、ぱっと帰る。」という価値観はすでに根付いていると思います。いま僕がもっとも重視しているのは、②番の「ちゃんと聞く、ちゃんと言う。」です。

社員には「自分と違う意見もきちんと聞こう、そして、自分の意見もはっきり言えるようになろう」と、常に伝えています。

日本人は文化的にディベートが苦手な印象があります。ときには空気を読みすぎて話せなくなることもありますよね。欧米では小・中学校時代に、ディベートやロジカルシンキングを徹底的に学び、ロジックを組み立て、最終的に自分の意見を言う訓練をするそうです。

一方、日本では暗記型・詰め込み型の教育を受けてきました。だから「なぜ?どうして?」という物事の本質や理由、過程を考えて議論する機会があまりありません。そのため相手と自分の意見が違うと「言ってはいけない」「どういったら良いか、わからない」と感じやすい。

そのため「意見の相違」が「人間関係の齟齬」になってしまうのです。 これでは合理的に仕事が進まないし、納得しないまま進めるのは、本人にとっても非常にストレス。結果的に、仕事のスピードも遅くなってしまいます。

「ちゃんと聞く、ちゃんと言う。」は、③番の「スピードで勝負する」にも繋がっていて、本当に大事なのです。

行動指針も「カオナビ」も、未来の日本の働き方を変えるシステムである

いまでこそ僕は、長時間労働に頼らず、生産性の高い働き方を大切にしています。しかし、かつては寝食を忘れて仕事に打ち込むタイプでした。

大学卒業後、僕は外資系のコンサルティング会社に入社しました。仕事はすべてプロジェクト制です。プロジェクトマネージャーに「この人は成果を上げられない」とみなされると仕事人生は終わり。「君にしかできない付加価値は何か。バリューを出せ」と毎日言われました。プロ意識は磨かれましたが、帰宅時間が深夜を過ぎることもありました。 

カオナビ創業時は僕も独身だったので24時間態勢で働いていましたが、結婚し子どもが生まれたころに社員を雇いはじめ、価値観が変わりました。仕事は効率的に終わらせ、家族との時間も大切にしたいと考えるようになったんです。

僕自身は経営者として責任があるから、いざとなれば24時間でも働くつもりです。しかし、それを社員には求めません。社員は限られた権限と責任で働いているから、その点はフェアでありたい。あくまでビジネスとして、経営者の義務としてそうしたいんです。

ちなみに僕自身は、将来的には6時間労働も視野に入れています。なぜなら、人間の集中力は1日最大3時間ともいわれているので、8時間も働く必要はないと考えているからです。ただし6時間を実現するには、社員全員のプロ意識をもち、短時間で効率的に働けるスキルを身につけることが先決です。

そして究極の理想は、もはや決まった時間さえもない、ミッションと成果だけが決まっている完全裁量労働制です。時間はかかるかもしれませんが、その理想を実現するための一歩として行動指針があります。

社員に行動指針が浸透すれば、お客様にいまより進化した「カオナビ」をよりはやく提供できるはずです。また、働き方改革を推進するシステムを提供する企業として、自らもどんどん改革に取り組んでいきたいです。

さまざまな業種業態がありますが、日本の働き方に対する考え方のひとつとして、一石を投じられたらと思っています。