オーダーメイド菓子を中心に注目を集めるパティシエの小島和美。気象予報士のアシスタントからWebデザイナー、パティシエという異色のキャリアを持つ彼女。そのキャリアの分かれ道を導いたのは「好き」という気持ちより「好奇心」だった。

新しい仕事にのぞむときって、スパイの気持ち。知らない世界を潜入捜査してる

いつもスパイみたいな気持ちで新しい仕事を選んでいるんです。ファーストキャリアの気象予報士のアシスタントもそう。仕事自体への興味もあったけど、“社会”ってものを潜入捜査してみようって感覚でした。

実家が商売をしていたからいつかは「なにか」で独立したいと思ってたんです。だけど、社会や会社ひとまず知っておこうと。だからまずは企業に就職しました。

しばらくすると、独立に向けての気持ちが育ってきました。でも、まだ何で独立するべきかは自分でもわからなくて。ただ、漠然と「手に職」という気持ちもあり、デザインの世界に飛び込みました。未経験だったけど、とにかく負けず嫌いだったので、努力はいとわなかった。

これも、元々絵を書くのは好きだったから、その実態を知りたいと思ったんですよね。スパイ心(笑)やっぱり好奇心が私を突き動かしているんですよね。

念願の独立だったのに、収入ゼロ。順風満帆とは言えない理想への道のり

デザイナーとして数社経験した後はWebディレクターに。Web業界は商品サイクルや意思決定スピードが速いので、飽き性のとても自分に合っていました。結果的にこのスキルを生かして独立することになったんです。

念願の独立だったけど、そのあとは簡単じゃなかった。急に大口クライアントに切られて収入がゼロになったり、一緒にやってきたスタッフを失うことにもなった。

実は、独立の前も恋愛がうまくいかなくてメンタルがボロボロになっちゃったり、正直独立するまでも順調じゃなかった(笑)「もうダメかも」というときもありました。

けど、諦めないで準備をしていれば、絶対タイミングって来るんですよね。

Webサイトのレシピ紹介で、お菓子づくりへの好奇心に火がついた

ある時制作を担当していたWebサイトでお料理やお菓子のレシピ紹介をすることになったんです。料理は好きでしたけど、お菓子はまた別物だと思ってて。

また好奇心に火がついてお菓子を習い始めるんです。突き詰めて、師範の資格を取得するところまで行っちゃいました。さらに専門学校を卒業してオーダースイーツ店で1年修行。そのまま、今のオーダーメイド菓子のパティシエとして開業することになったんです。

このときもタイミングが味方してくれました。当時はまだ”オーダースイーツ”が珍しく、勢いのあったITベンチャー企業がパーティーのデザートとして注目してくれたんです。

独立したばっかりだったけど、SNS経由の紹介で注文がとれたのは、とてもありがたかったですね。

不安を消すために誰かに勝とうとしてた。今は健康で楽しめればそれでいい

意外に思われるかもしれないけど、私すごくネガティブなんです。その不安を埋めるために努力を続けてきたのかもしれない。自分の中の理想を追い求めて技術を磨いたり、SNSで実績をアピールしたり。

隣の子、社会、自分。とにかく誰にも負けたくなくて、ずっと戦ってきました。

でも、自分は自分しかいないんだから人と比べても仕方ないし、そもそも自分の”良さ”って自分が決めることじゃないんだなって気がついたんです。

自分を大きく見せることをやめて、自然体でいるようにしました。

野心とか競争心を持ってたときより今の方がずっと仕事が楽しい。もう今は、健康で楽しければそれでいいやって気持ち(笑)。だって人って死ぬときは何も持っていけないんですよね。好きだったものも、何も持っていけない。

ただ自分が楽しみながら、求められたことに誠実にこたえていく。すると可能性が開けてくるんです。

私は、あまり戦略を持たずに、好奇心にしたがって生きてきました。でも、この好奇心がチャンスを運んできてくれる。不思議と全部がそろうタイミングって絶対にくるから、考えすぎずにチャンスを生かした方がいいなって。

また好奇心がうずいて、数年後にはパティシエじゃない何者かになってるかもしれない。でも違う何かに出会っている未来の私が楽しみだったりするんです。