企業のビジョンは、普遍的な言葉が使われることが多く、日々の業務に直接つながりにくいもの。カラダノートでは、ビジョンと日常業務を直結させるための基準や指針となる「ビジョンコンパス」を、電通ビジネスデザインスクエアの協力のもと策定しました。そのプロジェクトの経緯や、そこから生まれた化学反応をご紹介します。

“カラダノートらしさ”を明確にし、ビジョンの解像度を上げる

▲カラダノートの羅針盤となるビジョンコンパス策定を行った、電通ビジネスデザインスクエア、コピーライターの高橋慶生さん

多くの企業が、実現したい未来を「ビジョン」として定義しています。しかし、社員一人ひとりにとっては、日々の業務と向き合う中で、いつもビジョンのことを意識しながら行動する、というのもなかなか難しいものがあります。

株式会社カラダノートも例外ではありませんでした。広報・ブランディング室室長の彦坂真依子は、自社の事業特性から、企業ビジョンの「家族の健康を支え 笑顔をふやす」をさらに浸透させるにはどうすべきか?という課題を抱えていました。

彦坂 「当社の事業の軸であるアプリは、ユーザーに寄り添い想いを実現しようとするもので、広告収入などによるメディア収益を設けていません。キーワードとしては、『寄り添い』『ママの伴走者』など。
一方で、収益の柱となっている生活支援事業は、LPからママユーザーを集客してクライアントサービスとのマッチングでマネタイズをする、ビジネス色が強い事業。キーワードとしては、『集客』『マッチング』『最適化』などです。
このふたつを両立してこそのカラダノートなのですが、かなり色味が違うので、“カラダノートらしさ ”とはなんなのかを考えなおす機会が社内でも増えていました」

そこで、会社への理解を深め、ビジョンを深く落とし込む目的で立ち上げたのがブランディング浸透プロジェクト。部門長を中心とした、社内横断的な取り組みです。

並行して、取締役CFOの平岡晃が中心となり、社外との連携を模索。電通ビジネスデザインスクエアのコピーライター高橋慶生さんとともに、ビジョンを社員一人ひとりの仕事に結びつけるための「ビジョンコンパス策定プロジェクト」を開始しました。

高橋さん 「自分たちで “らしさ ”を考えるのは意外と難しいことです。第三者である私がお手伝いすることで、経営陣の皆さんの意志や理想を、ていねいにひも解いていこう、と。その上で、ビジョン実現のための指針となる『ビジョンコンパス』をつくりませんかというご提案をしました。
ビジョンコンパスというのは聞き慣れない言葉だと思いますが、私自身さまざまな企業とビジョンに関するお仕事をする中で、大切なのは『羅針盤』だということが見えてきました。
つまり、目指すべき大きな未来はわかった。じゃあ実際に、どんな方法で進むのか。どんな基準で決断をしていくのか。そういった、その企業の仕事における羅針盤となる言葉のことを指します」
平岡 「ビジョンコンパスを設けることによって、事業の幅が広がった、いろいろな挑戦ができるようになったという他社の事例を聞きました。当社もそうなるとワクワクするなと思い、電通さんと一緒にやろうと決断しました」

カラダノートのビジョン「家族の健康を支え 笑顔をふやす」には、3つの普遍的な単語が含まれています。まずは、それぞれの単語にこめられた意味を深掘りすることから着手。辞書的な意味の奥にある、カラダノートがそれぞれの言葉にこめた意志を、コピーライターとともに見つめなおしていきました。

「収益」と「想い」を循環させる「ヘルシー」という尺度

▲ヘルシーなウェイ(選択肢)を創ることは、ユーザーやお客様へのお約束であるとともに、カラダノートとしての誓いでもある

ビジョンコンパスとは、ビジョンの実現に向けて、日常の行動指針、判断基準になる羅針盤としての言葉。そして、企業の「真の生業(なりわい)」を規定するものでもあると、コピーライターの高橋さんは説明してくれました。

「カラダノートは○○業」という真の生業を定義することが、ビジョンコンパス策定プロジェクトの目標です。

まずは代表取締役の佐藤竜也が高橋さんと複数回面談を行い、起業当時の経緯や想い、カラダノートが目指す未来について意見を交わしました。

高橋さん 「佐藤社長とお話しする中で、カラダノートの “DNA ”を自分の中にインストールしていきました。そこから得られたインスピレーションで、カラダノートのキャッチフレーズを 40本ほど書いたんです。
それを会議室の机に並べて、佐藤社長、役員の平岡さん、広報の彦坂さんに、気になるコピーに各々で付箋を貼ってもらう『カラダノートの琴線さがし』というワークを行いました。
単純に、好き嫌いでもいいので、直感的に “カラダノートらしい ”と感じたものを選んでくださいという形で議論を深めていきました」

高橋さんは、意図的に「家族」「健康」「笑顔」とテーマを分けてキャッチコピーを開発。琴線さがしのワークを通して、カラダノートのメンバーそれぞれが考える「家族」「健康」「笑顔」の輪郭がはっきりしてきました。

その議論を経て、ビジョンを「ひとつのストーリー」として語るためのボディコピーを、高橋さんが書いてくれました。

こうしてまずは、ビジョンの解像度を上げるプロセスを経て、いよいよビジョンコンパスの検討に移ります。

高橋 「現在地から理想の姿へと向かう、1本の矢印があるとします。この矢印のベクトルを、『収益』と『想い』に分解しました。佐藤社長との会話の中で、このふたつが大切だという議論が出ていたんです。ただ難しいのは、このふたつはトレードオフの関係になりがちだということ。
でも、カラダノートの仕事はそのどちらが欠けても成立しない。そういう性質がとくに強い企業だと思います。収益と想いをグルグルと循環させながら、ビジョンの実現へ 1歩ずつ進んでいく。そんな考え方が、カラダノートの “らしさ ”を考えるカギになると思いました。
この両方の矢印をグルグルと回していくための尺度として、『ヘルシー』というキーワードを立てました」

想いを収益につなげるための視点。その収益を、さらなる想いの実現につなげる視点。その両方の場面で「それはヘルシーか?」と問うことが、カラダノートらしい事業や経営につながるのではないか。そんな提案に、代表の佐藤は深く納得。

そして高橋さんが最終的に提案したのは、「ヘルシー・ウェイ創造業」というビジョンコンパスでした。

高橋さん 「一般的なカテゴリーで考えれば、カラダノートは IT企業、ヘルステック企業という言い方になると思います。ですがこれまでのワークを通して、カラダノートの『真の生業』は、『ヘルシー・ウェイ創造業』という言葉で表せるのではないかと。
その言葉を基準に、今の事業、これからの経営を見つめていくことで、カラダノートらしさの軸が明確になっていくはずです、というお話をさせていただきました」

「全員が自分ごとにできるように」綿密な下準備にあった想い

▲ワークを通して、自分の仕事や所属部署をヘルシーという尺度で見つめなおすきっかけにもなった

「ヘルシー・ウェイ創造業」は、ふたつの視点で作用する言葉。ひとつは、社員一人ひとりの行動基準、アイデアの起点としての作用。もうひとつは、ユーザーに対する「約束」です。その家族にとって、今までより「ヘルシー」なウェイ=選択肢を提示するという約束の視点です。

役員が合意したこのビジョンコンパスについて、全社での発表を、月に1度の全社ミーティングで行うことを決断。その準備としてまず、ブランディング浸透プロジェクトのメンバーが、ワークを通して理解を深めました。

高橋さん 「ヘルシー・ウェイ創造業という言葉が生まれた過程や意義をお話した上で、ご自身の仕事に照らし合わせて『私はどんな “ヘルシー ”という価値を生み出すか?』をおひとりずつ、言葉にしていただきました。皆さんそれぞれ真摯に向き合って、書いてくださいました。

その後の社内への共有の仕方、浸透方法については、責任者の彦坂を中心に慎重に進めました。ビジョンコンパスの発表そのものは高橋さんにしていただくものの、その前置きとして、3~5名の部門ごとに、プロジェクトの経緯と趣旨を共有する必要があると感じていました。

彦坂 「当社は比較的なんでもチャットで会話する文化ですが、きちんと聞く土壌をつくりたくて。多少非効率ではありましたが、一人ひとりの目を見て話せる距離感を大事にしました。
『発表する言葉が社内の共通言語になって、友人や家族にカラダノートを説明するときにも、わかりやすく齟齬なく伝わるものになってほしい』という想いと一緒に、『発表されてすぐすっきり納得できるものではないかもしれない。でも少しずつ咀嚼してなじんでいけばいいと思う』ということも伝えました。

これだけ慎重に前置きをしておきながら、言葉自体の発表は後日だったので、かなり『乞うご期待!』な気持ちにはできたのかなと思います(笑)」
高橋さん 「その彦坂さんの情熱に支えられた部分がすごく大きいですね。社員の方に『これで決まったのでよろしく』という形にはしたくないと話されていました。一人ひとりが腑に落ちる言葉にするために、浸透に向けたステップをていねいに進めていただきました」

そして迎えた全社ミーティング。本社オフィスに高橋さんをお招きし「ヘルシー・ウェイ創造業」の発表と、ワークを行いました。先にワークを体験していたブランディング浸透プロジェクトのメンバーがその他のメンバーをリードし、自分たちの仕事を「ヘルシー」の視点で理解を深める作業を実践しました。

また、現場メンバーからの要望もあり、役員3名が考える「ヘルシー・ウェイ」を発表。そこに込めた想いを話すことで、社員への改めての決意表明にもなりました。

アイデアの起点、そしてぶれない軸として。ビジョンコンパスの可能性とは

▲ビジョンコンパスの「ヘルシー・ウェイ創造業」を羅針盤にビジョン実現へ向けてカラダノート全員で進んでいく

社員個人、チーム、部門、会社全体……とさまざまな階層で「ヘルシー」を軸に、自分たちを見つめなおす。新しいアイデアを考える。社内のいろんな場所から「ヘルシー」な変化を生み出していくのが、カラダノートの次の目標です。その積み重ねが、企業ビジョンの「家族の健康を支え 笑顔をふやす」に深みや奥行きを与えていきます。

次のステップとして、まず社内から、コーポレートサイトの変更をはじめ、オフィス内の掲示や、名刺への記載など「ヘルシー」を軸にした社内施策などの工夫を検討中です。

彦坂 「まずは部門長や、ブランディング浸透プロジェクトのメンバーが意識的に使うようにしています。今のところ、『それはことの本質か?』という意味合いで、『それってヘルシーなの?』という質問を投げかけていることが多いですね」
高橋さん 「佐藤社長はさっそく、『ヘルシー』の軸で事業のアイデアがいくつか浮かんできたとおっしゃっていました。そんな風にこの言葉が、ルールや制約ではなく、アイデアが生まれる起点になればいいなと考えています。
自分たちが大事にするものを忘れないという意識が明確になりますし、『とはいえ来月の数字が……』というところよりも 1歩深い議論ができるようになりますよね」

会社を見つめなおすきっかけにもなったビジョンコンパスの取り組み。「ヘルシー」というぶれない軸とともに、一人ひとりが主体性を持って行動していくことに、大きな意味があります。

平岡 「つくってもらった言葉をわれわれが使うのももちろんですが、一人ひとりが常に考え続けてほしいなと思います。個々が自分の言葉として使えるようになるか、そこからアイデアが生まれるようになるかという点では、ここからが勝負だと思っています」

ビジョンコンパスは、言葉を決めて終わりではありません。「それはヘルシーか?」という問いを持ち続け、社内への浸透、さらに世の中にもその概念が浸透していくこと。

「家族の健康を支え 笑顔をふやす」というビジョンの実現へ向けて、私たちカラダノートは、これからも力を合わせて1歩ずつ、進んでいきます。