創業以来過去最高値となる年商1000億円を突破した綜合キャリアグループ。その中で、人材募集に特化したセクションが「採用戦略室」だ。求職者向けの広告やプロモーションを担い、年間75万件もの応募を獲得する。室長の小林克至が先導する、部署での取り組みとこれからの展望とは── 。

人材募集の担い手「採用戦力室」。“センター集約化”で合理化を実現

人材(スタッフ)募集を一手に担うセクションである「採用戦略室」は、小林を筆頭に5名の社員と21名の契約社員で構成されている。ここで働く者は皆「求人広告プランナー」と呼ばれ、それぞれが責任を持って業務に当たっている。

その業務は、「各店のリクルーティングディレクターがクライアントから受注した仕事を求人広告として制作して出稿する」こと。言葉にしてしまえばシンプルだが、奥は深い。

小林 「私たちが制作する求人広告でどれだけ応募を獲得しそこから採用につなげられるか。採用戦略室の成果がグループ全体の売上に影響するといっても過言ではありません。それだけ当社の中でも重要なポジションにあります」

広告を出稿するということは費用がかかるということだ。予算を最小限に抑え、最大限の効果、つまり応募数とそこからの採用数を得られるよう、戦略的に展開していくことが重要だと強調する。

小林 「広告を戦略的に展開していくためには、過去の傾向からの今後の応募予測や各方面から得るマーケットの情報など、ナレッジの蓄積が必要です。そうした専門知の蓄積と継承のため、当社は採用支援業界の中でもいち早く求職者募集部門をセンター業務として集約しました」

全国に点在する各店がそれぞれ求人広告を出稿すると知識や数値データの蓄積が難しくなる。つまり、出稿に対して最大限の効果が得られなくなる可能性があるのだ。業務の集約で効率化やコストカットにもつながるという利点もある。

だが、生まれるのはメリットだけではない。集約化によるデメリットもあった。営業エリアの拡大と店舗数の増加により受注から広告展開までのリードタイムだ。それをどう解決するか──その答えは、他部署との連携だった。

小林 「当社にはシステムを担当する専門部署があります。関係部署と連携し、自社システムの開発・改良を進めた結果、各店担当者による受注情報の登録とほぼ時差なく広告露出することができます」

各店のリクルーティングディレクターが受注情報を専用システムに入力すれば、広告出稿を管理するシステムと連動し、数時間以内にWEB広告に出稿することも可能だ。

課題に向けて他部署他部門ともすぐに連携できるという、フラットな環境。綜合キャリアグループの強みが生かされた好例である。

蓄積されたデータから募集効果を最大限高め、年間獲得応募数75万件に

過去最高の売上高となった綜合キャリアグループの成長要因のひとつが募集吸引力の強化だ。

有効求人倍率は1.6倍以上を推移し他社など競合が多い中、採用戦略室で獲得する応募数は昨年対比1.2倍以上をキープ。今年度は75万件もの応募を見込む。

その背景にあるのは、データドリブンマーケティング。オウンドメディアで獲得するトラフィックデータや各種求人媒体で獲得する応募者データ、自社を介してさまざまな企業で働く契約社員の行動データなど、さまざまなデータを蓄積・解析し、その傾向値によって施策の意思決定をしてきたことで高い募集吸引力を保持してきたのだ。

小林がけん引する採用戦略室の部署理念は「求人マーケットを制する戦略的集団」。

小林 「マーケットにある応募を取り切ることができれば競合に流れる余地はありません。つまり求人マーケットを制することができれば結果的に売上拡大とグループのさらなる飛躍になります。募集効果を最大限に高めるため、キャッチコピーや表現、出稿エリアなど蓄積されたデータから PDCAを回し、採用戦略を実行していきます」

求人広告の制作は長野に集約。東京と大阪に主軸となるメンバーを配置し、広告代理店やサプライヤーとの商談をしている。

扱う広告はオウンドメディア(自社広告)とペイドメディア(外部広告)に大きく分けられ、それぞれ担当を配置。

小林 「ペイドメディアでは必要な費用を投下して露出を増やし、いかに効率よく応募を獲得するかが重要です。具体的手法については口外できませんが、オウンドメディアは応募獲得と併せ、リスティングやリマーケティング、 SNSからの集客などさまざまな手法を実践し、知識として蓄積しています」

日々進化するアドテク。常にアンテナを張り情報収集しながらオウンドメディアを中心にさまざまな手法を取り入れていくことが大切だと小林は言う。

広告の媒体はWEBだけではない。デジタルな手法のみにこだわることなく、求人誌や折り込み、タブロイド紙等の紙媒体というアナログな手法でのアプローチも積極的に行っている。

さまざまな手法を取り入れることは、“こだわらないこと”なのだと小林は考えているのである。

小林 「 WEB主流の時代に紙媒体?と思われるかもしれませんが、成果につながるのであれば広告の形態や種類にはこだわりません。エリアやターゲットに合わせて最適な出稿は何か。日々効果検証を行いながら運用しています」

目の前の数値を分析することは必要不可欠だが、なぜその事象が起きたのか論理的に物事を考えること。さまざまな情報をつなぎ合わせて仮説を立てられること。これらも同様に重要なのである。小林はそれを自らに戒めるとともに、メンバーにも常日頃から伝えている。多角的な分析と考察が、高い効率を生むのだ。

高い募集吸引力を保つために──徹底したターゲティングと他社分析

採用戦略室の目標は応募をたくさん獲得することだけではない。応募を獲得しても、その応募者が派遣先や紹介先で仕事を始めなければグループの利益にはつながらないからだ。

小林 「もちろん母数を獲得することは大切ですが、一つひとつのお仕事にマッチした求職者からの応募を獲得し、ミスマッチなく無事にお仕事を開始するところまで見据えて戦略を打たなければならない。そのためにメンバー一人ひとりがしっかりターゲティングし、それを原稿に落とし込むことが重要です」

ターゲティング──小林から何度も発せられるキーワードであり、高い募集吸引力を保つ重要な戦略のひとつだ。むやみやたらに広告をするのではない。大事なのは情報の“指向性”──。

小林 「採用支援業界では通常、同一のクライアント(企業)から複数の会社に仕事を発注するため、求人広告に同一条件の求人が並ぶことがよくあります。そんな中、いかに当社を選んでくれるかが勝負になるんです」

年齢、性別、居住地、趣味嗜好……ペルソナ設定でユーザーを分析し、ターゲットごとによりマッチした求人広告を出稿する。WEB広告であれば、PV数やユーザーの属性(性別など)を分析し、しっかりターゲティングできているのかを検証。そして必要な対策を洗い出しPDCAを回すというサイクルを意識した。

また、アグリゲート型の求人サイトや競合他社のオウンドサイトのチェックも欠かさない。

小林 「エリアの相場に対して当社の時給や待遇はどうなのか。他社はどんな打ち出しで出稿しているのか。各自分析してメリットとなるポイントを探して打ち出す。紙媒体であれば他社の条件やキャッチコピーを週単位で調べ上げ、データ化するチームもあります」

しかし、せっかくデータを集めても活用できる体系が整っていなければ意味がない。応募を受け付ける部署。求職者と仕事をマッチングする部署。受注の獲得や就業者のフォローをする各店のリクルーティングディレクター。グループ内のさまざまな部署や人との連携をより強化していくことが必要不可欠だと小林は強調する。

小林 「各セクションの代表者が定期的に集まり改善点を協議や立案をする場もあります。部門問わず、目標に向け関係者が足並みそろえてすぐ動けるという強みを、さらに生かしていくことが課題になってくると思います。情報を 100%施策に直結させられるしくみづくりが目標ですね 」

究極の理想は「1応募1採用」。新しい手法に挑み続け最強の戦略的集団へ

アドテクやAIなどが日々刻々と進化し続ける中、小林は未来をどう見据えているのか。

小林 「スマホ(スマートフォン)の普及でネットがより身近になり、ペーパーレス化が進み、広告業界も大きく変わりました。インターネットの検索能力は日々発達し、求職者が知りたい情報に対し最適なサイトを表示させ、その精度はどんどん高まっていく。その中でサイトや求人原稿にどんな情報が必要なのかを分析・リサーチし、それをしっかり落とし込むことがますます重要になっていきます」

メンバー一人ひとりがアドテクの知識を身につけ、自ら考えられることが大切だという。

就業に直結しやすい受注を注力案件として全国の各店から週単位で聞き取り、広告の露出を強化。そして、その仕事にマッチした求職者層への訴求を強化するため、職種や仕事の手順、職場の雰囲気など求人原稿の内容をより充実化させるライティングに特化したチームを新たに発足した。

小林 「どんな仕事をするのか、どんな職場なのか、より詳細に分かったほうが就業後のイメージもしやすくなる。そのお仕事の良い面だけでなく悪い面もしっかり伝えていくことでミスマッチを減らし、より長く就業していただきたい。そのために必要だと思うことは、どんどんやっていくつもりです」

既存の方法だけでなく、新たな手法も積極的に取り入れる。多角的な戦略を、これからも続けていくのだ。

これまではメリットを前面に打ち出した広告の出稿がメインだったが、将来的にはマイナス面も原稿に記載した「ネガティブ求人広告」を実現したいという小林。そんな小林の究極の理想は「1応募1採用」。

予算を最小限に抑え、その仕事にマッチした求職者にいかに訴求できるか──部署として正解が見えない課題でもある。

小林 「事務職では AI化、製造・物流現場ではオートメーション化、販売も無人化が進みます。そのときにどういった人材が求められるのか、それが HR業界の近い将来の課題になります。それを見据えた上で今何ができるのか、しなくてはならないのかを、さまざまなテクノロジーを掛け合わせながら解決していく必要がある」

広告のプランニングから効果検証・改善のPDCAを回しつつ、多角的な吸引手法を一人ひとりが推進していく。最強の戦略的集団になるための挑戦はこれからも続く。