きつい、汚い、危険。介護業界にある「3K」。悪印象が業界への入り口を狭め、人材難を悪化させている。そんな業界の人材不足を解消しようと奮闘しているのが、エスプールヒューマンソリューションズ(SHS)の上月英将だ。「伴走する営業」で業界を変えようと努力を続ける上月はこれまでどのような道を歩んできたのか。

一度は離れた派遣業界。自分、業界、そして愛する家族の為に再挑戦

▲学生結婚し、若くして父親になった上月

学生結婚をし、縁あって当時利用していたアミューズメント系の派遣会社の社員となった上月英将。クライアントの人材不足を解決するため、そして愛する家族のために昼夜問わず働いていた。

上月 「クライアント第一の精神で仕事に臨みました。養うべき家族もいましたし、とにかくがむしゃらでした。スタッフが足りなければ自分で現場に立ったこともあります」

しかし、上月は当時、クライアントとうまく関係性を築くことができなかった。時には物が飛ぶ場面もあったという。

クライアントのことを想って行動しているつもりなのに、なぜ感謝されないのか。直面する現実に納得がいかず、上月は一度、派遣業界を去ることを決めた。

だが、上月は再び派遣業界へと戻ってくることになる。きっかけとなったのは派遣会社から転職した先の、某大手飲食チェーン店での経験だった。

上月 「店長として働いていたのですが、そこで派遣業界で学んだことが、すべて生かせていると気づいたんです」

日々舞い込むクレームへの謝罪や、さまざまな価値観をもつスタッフとの仕事。それはかつて派遣業界で培ってきたコミュニケーション術を生かす日々だった。

そこに自分がやりがいを感じていると気づいた上月は、派遣業界で人と関わることこそが天職なのだと悟った。

大手と中小。それぞれで感じた“課題感”

飲食業界で1年半勤めた末、次のステージとして介護派遣業界の営業を選んだ。介護業界を選んだのは母が看護師だったことと、学生時代に看護補助を経験していたことが関係している。そして何より、医療系派遣は医療事務のみならず、介護職や調理補助の施設派遣も担える業種であると新たな気づきを得て、その社会貢献性の高さに魅力を感じ入社したのだった。

そこは「業界No. 1を食うぞ! シェアを奪いとれ!」と奮闘している大手企業。そこで上月は介護の新規事業立ち上げを経験する。

上月 「数字を追いかける日々ではありましたが、社会貢献性の高い事業に携わっているという実感がありました。クライアントやスタッフからたくさん 『ありがとう』を言われることが嬉しかったですね」

だが一方で、介護施設へ未経験・無資格のスタッフを派遣しては辞めるという繰り返し――悪循環が生まれた。辞めるとわかっているスタッフを施設側が好んで雇いたがるわけもない。後に施設側は未経験・無資格のスタッフ供給を拒否し始め、かつ3Kイメージが蔓延し、人材不足はより深刻化する結果となったのだ。

そんな状況に思い悩んだ上月は大手派遣会社を去ることを決め、介護派遣をゼロから立ち上げられる中小企業へ活躍の場を移した。

上月 「大手はある程度やることが決まっているし、選択肢が少ないことに窮屈さを感じたんです。中小企業なら自分主導でできるから、負の連鎖を断ち切るような施策を自由度高く打つことができるかな、と」

プレイングマネージャーとして、広告出稿から採用・スタッフフォロー・既存や新規営業、そして書類管理まで。できることをすべて自ら行い、あっという間に4年が過ぎていた。

しかしここでも、苦難があった。

人材は大手派遣会社に流れ、意図と反して調理補助等の派遣へと姿を変えていったのだ。

上月 「中小企業は自由度が高いという強みはありましたが、市場開拓が難しいというのもまた確かでした。大手派遣会社は既に名が知れていて、求職者の目にも触れやすいですから。

いろいろな経験はできましたが、自分が本当に実現したいことからは遠のいてしまっていて。歯がゆさを感じる日々でした」

中小企業でやれることに限界を感じていた上月。そんな時元同僚であり、現SHS東北支店の支店長の熊谷友孝から同社について話を受ける。

SHSで見つけた「グループ派遣」という“最適解”

SHSは「グループ派遣」という、業界でも唯一無二のサービスを提供している。それは、フィールドコンサルタント(FC)と呼ばれる社員が現場に常駐し、日頃派遣営業が行っている業務、たとえばスタッフの研修やメンタルフォロー、各施設のオーダー状況把握などを担うというもの。

言うまでもなく、介護業界の人手不足は深刻だ。大手の派遣会社から人材を供給してもらうだけでなく、研修に力を入れている企業も多いが、根本的な解決策にはなっていない。

そんな中、SHSは近い将来、介護業界に人材が集まると予想している。AI化によって事務系の求人数が衰退し人々が職を求めるからだ。SHS社長 香川健志はこう語る。

香川 「そのような未来で、介護職を未経験から誰もが楽しく働ける人気職種にしたい。IT技術を導入し、利用者さんとのコミュニケーション量や質を改善する。 FC社員が伴走し定着に努めることでこの業界を劇的に変えるつもりです」

この企てが、上月に衝撃を与えた。

上月 「画期的だ、と思いました。ありそうでなかった発想だな、とも。大手では派遣して終わりだったので定着率が低く、そこに課題を感じていましたが、アフターケアまでしてあげることで離職率の低下につながる―—理想的なサービスですね」

こうしたサービスを展開する会社でなら、介護業界の人手不足を抜本的に解決できるのではないか?

そう考えた上月は、やがてSHSに活躍の場を移すことを決意する。給与は前職から下がる。しかし、業界を変える可能性がある施策に携われることに、ワクワクが止まらなかった。

これからも、スタッフと「伴走」を続けていく——

▲奮闘する仲間とともに業界を変える!(中央が上月)

2019年現在、SHSには14人のFC社員が入社している。それぞれが介護業界の未来を変えようと現場で切磋琢磨し、月1回の本社出勤日に、目指す未来像を共有している。

そんな仲間たちの下で、21名の派遣スタッフが未経験ながら介護の経験を積んでいる。上月は今後、年内にさらに5名のFC社員を採用し、スタッフも10名以上育てていきたいと話す。

上月 「『伴走する営業』が私のポリシーです。スタッフの人たちは皆、ひとりで完走できないから私たちに頼っています。だけど、営業が隣で一緒に走ってあげれば、完走できる。そう信じているんです」

上月が出会ってきたスタッフの中には、いろいろな人たちがいた。未経験で就業した後、資格を取って正社員となり、安定した生活を始めた人。スタッフを始めてから更生した生活を送れるようになり、感謝の手紙を送ってくれた人。

どれも諦めずにスタッフと向き合い、見切らず見捨てず、スタッフファーストで仕事をする上月のスタンスが生んだ結果である。

上月 「スタッフさんをコマやお金として扱ってはいけません。その人の人生を預かり、寄り添うことが、派遣営業の本来あるべき姿です」

自分にさまざまな経験をさせてくれた業界に恩返ししたい――。その一心で、常に今できることを、着実に。これからも上月は「伴走する営業」を続けていくのだ。

そうして上月は今日も、これからも多くの仲間の知恵と経験を借りて業界を変えていくために奮闘する――。