“企業家輩出”と“世界一”を理念に掲げ、飲食店の直営およびFC運営とコンサルティング事業を手がけるGlobridge。取締役の大石匠は、「未来を自分でプロデュースする」人材を育成し、21世紀の飲食業界における「働く」スタンダードをつくり出そうとしています。

飲食業はタレント業──人間らしい仕事で特別な“体験”を提供する

▲株式会社Globridge 副社長 / 株式会社Globridge SCM 代表取締役社長 大石 匠

近い将来、人間の仕事の多くはAIやロボットに取って代わられると言われています。では人間は何を仕事にするべきなのか。大石は「好きなことを仕事にすればいい」と断言します。

大石 「世の中にはモノがあふれ、 “シェア ”という概念が浸透してきました。住まい、自動車、ファッションなど、以前であれば人の欲求を満たした “消費 ”の価値は薄れ、人々は表現される世界(コト)や、モノの持つストーリー(イミ)に価値を感じるようになっています。
これからはより、高い付加価値を提供できるサービス業が消費の中心になるでしょう」

そのような時代の変化に合わせて、飲食業に求められることは何かを模索してきた大石がまず考えたのは、「人間は、人間にしかできないことに集中するべきだ」ということ。たとえば企業でいえば、経営のようなブレーンの仕事です。次にデザイン。未来を描くことは人間にしかできません。

そしてもうひとつは、サービスやホスピタリティといった人とのコミュニケーションに関わる仕事です。

大石 「大切な人と顔を合わせ、雰囲気の良いお店でおいしい食事やお酒を楽しむことは、誰もが愛おしく感じる時間ですよね。時代がどんなに変わろうとも、これは絶対変わりません。」

さらにそのお店にしかない特別な“体験”が用意されていれば、時間をかけて足を運び、お金を払う価値は十分に感じてもらえると大石は考えています。

大石 「たとえば名物ママやプロフェッショナルを感じさせる板前。あるいは『この店を選べば、絶対にデートは成功』といったような雰囲気。
つまり、会いたくなるような人がいて、行きたくなるようなサービスを提供する。そんなタレント性のある飲食店を展開していければ、私たちのビジネスは成長するだろうと自信を持っています」

従来の飲食店のような雇われ店長ではなく、店舗を「企てる」人材を育て、「世界一になる」という志をもってサービスを提供する。仕事を愛するプロフェッショナルが手がけるお店なら、たくさんの人が価値を認めてくれるはずです。

大石 「人を喜ばせるサービスや、こだわりや夢を持った人がつくったお店なら、行ってみたくなると思いませんか?」

なぜこのような想いを抱くようになったのか。大石の過去をたどってみると、飲食店の「働く」スタンダードをつくりたいと語る今の姿からは、想像もつかないような時代があったのです。

「世の中にとって価値ある人間になりたい」壮大な野望が開花させた商才

▲「自分のやりたいことに真っすぐな人と未来をつくりたい」と語る大石

まるでマジックのように、未来の成功への道筋を語る大石。論理的なマネジメントと力強い言説は、聞く人の心を強く惹きつけます。

人生に深く悩むこともなく、持ち前の明るさでこれまでたくさんの人にかわいがられてきたと話す大石ですが、小学校から高校まで打ち込んだ野球部を引退したとき、突然“目指すものがなくなった状態”を経験します。

大石 「高校 3年生になって同級生はみんな、部活を引退して受験勉強を始めました。けれど私はずっと野球一筋だったので、全力で打ち込めるものをすぐには見つけられなかったんです。
なんとなく大学に行くなんて性に合わない。だから進学校だったにもかかわらず、進路を決めないまま卒業しました。それからはアルバイトをしながら本を読んだり映画を見たり、ひとり旅もしましたね」

にぎやかだった大石の人生に、ふいに訪れた静寂。

その静けさを破ったのは、映画「パッチアダムス」でした。

「すべての人に医療を、治療にはユーモアを」という信念のもと、無料治療院を開設し、愚直に患者にとっての最善を求めた主人公の姿に、大石は「自分はこれまで、人のために何かをしたことがあっただろうか?」と考えさせられました。

大石 「感動しすぎて帰りの電車でも泣いていたので、連れの友人に電車から降ろされたほどです(笑)。自分も世の中の人にとって、価値のある人間になりたい、価値のある人を支援できるような人間になりたいと思いました」

大石は、とりあえず「世の中を良くできそうなすごい人」を目指し、“総理大臣になる”という夢を掲げます。

思い立ったらがむしゃらに突き進む性格が幸いし、短期間の受験勉強で大学に合格。経営学やマーケティングなどを夢中で勉強しました。その中でも歴史を学ぶのが好きで、現在の会社や店舗の組織づくりに影響を与えています。

大石 「 Globridgeの組織をピラミッド型ではなく、『自分たちのことは自分たちの力で』を体現する狩猟社会型やコミュニティ型の組織に近づけていったのも、人類の歴史からヒントを得ています」

それから勉強を進めるうち、政治家より起業家の方が社会により強いインパクトを与えられるのではないかと考えるようになり、新卒で商社に入社することを決意。

当時はあまり「働くこと」に対してポジティブな印象はなかった大石でしたが、商社への入社によりビジネスへの才能が目覚めることになるのです。

必死に成果だけを追った日々──Globridge創業と拡大の苦悩

▲Globridge創業当時、店舗に立つ大石

商社では行動が結果につながることが楽しくて、大石は気がつくと高い営業成績を手にしていました。ただあくまでも営業は起業のための勉強と割り切っていたため、就職から2年半後には週末起業をスタート。メルマガの発行を構想したり、オリジナルTシャツの露店販売をしたりといった経験を重ね、ビジネスの難しさを実感しました。

大石 「週末起業を始めた段階では、すぐにでもビジネスを立ち上げるつもりでいました。けれど 3~ 4カ月やってみて、経営を勉強する必要があると気がついたんです。それで外食の経営コンサルティングをメインサービスとしていた会社で、採用試験を受けました」

その最終面接で大石は、現Globridge代表の大塚と出会います。当時の第一印象は、とにかくパンチの効いた人。

大石 「面接試験で入社も決まってない私を相手に、『俺は世界を取りにいくけど君はどうする?』って聞くんですよ。驚きましたけど、『僕が世界一の社長にしてあげますよ』って答えました。今から思えば、あの瞬間に “今 ”が始まったのかもしれません」

そうして入社を決めた大石は、大塚率いる飲食店のコンサルティング事業部で、直営店の店長を務めることになります。そこでも彼は天性の商才を発揮しました。

大石 「未経験でしたが、もともと手先が器用でしたし、メニューや販促を考え、ビジネスを回していくことも得意だったので、『これは天職だ』と感じましたね」

しかし、良い流れは長く続かず、短期間で多方面に事業を広げすぎたその会社は立ち行かなくなり倒産してしまいます。

大石にとっては、せっかく見つけた天職でした。後にこの業界のきっかけをくれた大塚が起業することを聞いた大石は、すぐに自分も参画することを決意。これがGlobridge創業の瞬間でした。

立ち上げ間もなく一号店をオープンし、順調に思えた経営でしたが、なんと4カ月目には倒産の危機に直面します。しかし、大塚はすぐに対策を講じました。

大石 「当時、まだ規制外だった呼び込みに力を入れたところ、倒産の危機を脱して集客はうなぎ上りに回復したんです。店舗も拡大し、売上は急上昇しましたね」

一方で、そのころの自分を、「人の仮面をかぶった鬼だった」と話す大石。過去の倒産危機をくり返すまいと必死になるあまり、いつしか利益だけが経営の目的になっていったと振り返ります。

大石 「当時は、 20人の新卒採用者が入社しても、 1カ月後に残るのは 5人だけという状況でした。『超』がつくくらいのトップダウンマネジメントで、仕事のやりがいなんてみじんも考えていませんでした。
当時の自分はとにかく必死だったんです。創業から数年はずっとそんな状況でしたね」

ところがそんな大石をたしなめるように、居酒屋業界は時代の転換期を迎えていたのでした。

「あの店だから行きたい」と言われなければ生き残れない

▲取締役でありながら、マネージャーや店長とのミーティングは日々欠かさない

Globridgeが経営する店舗が急成長を続けていたさなか、一部の悪質な呼び込みが横行したことで、すべての呼び込みの集客が規制の対象となり、繁華街に店を持つ居酒屋はビジネスの転換を余儀なくされました。

大石 「呼び込みに規制がかかったことに加えて、スマートフォンの普及によりお店選びの選択肢が広がって。お客様は事前にリサーチして食べたいものや過ごしたい空間などの目的を持ってお店を選ぶようになっていきました。
そのとき、日々変わっていく環境に対応し、価値を生み出し続けないと生き残れないことを痛感したんです。じゃあ自分たちは社会にどんな価値を提供できるのか、と改めて考えました」

居酒屋業態全体が逆風、つまり「集まって話ができるなら店はどこでもいい」と考える時代ではなくなっていました。

大石 「『それならわざわざ行きたい店ってどんな店だろう』と思ったときに浮かんだのが、ドラマや CMで見た癒し系のママやバーテンがいるバーや、大人になってよかったと思えるようなカウンターの寿司屋だったんです。ただそのイメージはどれも、イメージキャラクターであるタレントさんに象徴されているんですよね。
自分のお店を心から愛していることが伝わってきて、『あぁ現実にこんな店があったらいいのになぁ』って思うんですよ。そんな店を自分たちがつくるにはどうすればいいかと本気で考えました」

いつしか、やり方はトップダウンではなく、完全にボトムアップに。店舗で直接サービスに関わる人が、好きだと思える店をつくればいいんだと気がついた大石。マネジメントも180度転換し、店が雰囲気ごと良くなったと感じられるように徐々に変化していきました。

以来3年かけて、現在の経営理念や方針を固めてきたGlobridge。これから迎える仲間については、「未来の輝く原石を見つけたい」と言います。

大石 「接客が好き、料理が好き、ワインが好き、日本酒が好き。好きを仕事にして、プロフェッショナルになりたい。そんな自分のやりたいことに真っすぐな人と未来をつくりたい。それだけが、変化の時代にあって、唯一変わらずに求められるサービスを生み出せるんです。」

紆余曲折を経て、今の状態にまでたどり着いたGlobridge。ここに至るまでには、経営方針の大きなシフトチェンジと、大石自身の考え方に大きな変化がありました。これからGlorigdeにはどんな“好き”を持ったプロフェッショナルが集まってくるのでしょうか。

21世紀のサービスを切り開く「働く」スタンダードは、誰かの“好き”という気持ちから、すでに始まっているのかもしれません。