<4978> リプロセル 157 -1
リプロセル<4978>は2003年、東京大学および京都大学の研究成果を基盤とするバイオベンチャーとして設立された。山中伸弥教授による2007年のヒトiPS細胞樹立の歴史的論文で同社試薬が使用された実績を持ち、iPS細胞研究の黎明期から中核を担う。現在は横浜本社に加え、米国、英国、インドの4拠点でグローバルに事業を展開している。
同社のビジネスはiPS細胞技術プラットフォームを中核に、研究支援事業とメディカル事業の2つで構成されている。研究支援事業は、iPS細胞研究に不可欠な研究試薬、細胞、受託サービス、研究機器などをグローバルに提供し、安定した収益基盤を担う。一方、メディカル事業は、同社の中核的な事業であり、再生医療等製品の研究開発、臨床検査受託サービス、そして日米欧の規制に対応した臨床用iPS細胞の受託製造(CDMO)を手掛けている。
同社の強みは、iPS細胞について20年以上の技術の蓄積があり、幅広い用途に応じた知見・専門性がある点が挙げられる。iPS細胞技術プラットフォームが両事業の根幹を支えている。加えて、同社はグローバルに拠点も構え、米国などから先端情報を取得するとともに、グローバルな再生医療事業の展開を目指している。海外展開に既に着手している点は他のバイオベンチャーにはない差別化となっている。
同社が展開する再生医療市場は、経済産業省予測で2030年に約17兆円、2050年に約53兆円と巨大な成長潜在力を持つ。加えて、日本では2014年施行の改正薬事法により条件及び期限付き承認制度が導入されており、条件付き市販が可能となっている。収益化までの「デスバレー」が大幅に短縮されることは、同社パイプライン開発の追い風となっている。
2026年3月期第2四半期の連結経営成績は、売上高は前年同期比26.2%減の974百万円、営業損失は前年同期の149百万円の損失から546百万円の損失へと赤字拡大している。一方、通期予想の売上高3,037百万円、営業損失268百万円は据え置いている。尚、開示資料においては、継続的な営業損失を理由に継続企業の前提に関する重要事象等が記載されているが、25年9月末時点で現金及び預金と有価証券で約5,750百万円を保有し、当面の流動性リスクは限定的と言える。
同社の企業価値はメディカル事業の4大パイプラインの進捗が鍵を握る。最優先となっている(1)ステムカイマル(脊髄小脳変性症)は、第II相臨床試験を完了している。足元では、「条件及び期限付き承認」を目指し承認申請の準備を進めている。承認後は、市販可能となるため、更なる進展は株価のカタリストとなろう。(2)iPS神経グリア細胞(ALS等)は、動物実験で有効性が確認されており、臨床試験の準備段階にある。(3)TIL療法(子宮頸がん等)は慶応義塾大学と先進医療Bで臨床研究中。米国では薬価約51.5万ドルの類似療法が承認されるなど市場期待は高い。(4)GPC1・CAR-T療法(固形がん)はAMEDの事業に採択され臨床試験の準備段階にある。
株主還元については、同社は研究開発ステージのバイオベンチャーであり、事業から得られたキャッシュフローはパイプラインの研究開発に優先的に再投資する方針である。
投資の視点では、再生医療のポテンシャルは高いものの、新薬の開発フェーズが当面は続く見込みだ。一方、手元流動性に較べ、赤字規模はコントロールされており、株価バリエーションはPBR1.74倍と相応に切り下がっている。大きなアップサイドが魅力の銘柄であり、中長期目線での投資を検討していきたい。
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