景気ウォッチャー調査は、経済実態と指標数値のタイムラグが最も少ない経済統計だ。調査の対象となるのは、製造業・非製造業の従業員以外に、飲食店・小売り店の従業員、タクシー運転手、ホテル・レジャー施設従業員等、最前線で景気を体感している人びとだ。したがって、肌で感じる景気変動がビビッドに反映されており、示唆に富む統計になっている。
多くの経済統計は、数値が出揃う頃には、「過去のある時点の実態」となるものが多い。エコノミストや学者ならばそれでよいが、株式投資の観点からは「陳腐化したデータ」はなんの参考にもならない。一般に、「株価は景気に半年先行する」といわれている。過去の統計からトレンドを抽出し、将来の予測に利用するのなら意味はあるが、原データに基づいて機械的に投資シナリオを構築してもパフォーマンスは期待しがたい。いわば、「バックミラーを見ながら運転する」ようなものである。
ところが、景気ウォッチャー調査は株価とパラレル、あるいは時には先行性を見せる場合さえある。たとえば、リーマン・ブラザーズの破綻で世界中が大混乱に陥っていた2008年12月に、一致DI、先行DI共にボトムを形成し、綺麗な上昇トレンドを描いている。日経平均株価が底入れしたのは、09年3月の7054円。景気ウォッチャー調査の本質を認識していれば、安値圏で押し目買いに徹することも可能だったはずだ。