実に30年ぶり、「サニー」以来の快挙である。昨年11月、日産自動車のコンパクトカー「ノート」が国内販売ランキングで首位に立ち、その後も快走を続けているのだ。新型ノートのけん引により、長らくシェア5位と低迷していた日産の国内販売が活気づいている。
その立役者が、新型ノートに搭載されたパワートレイン(エンジンで作られた回転力を駆動輪へ伝える装置類の総称)の「e-POWER」である。エンジンの出力を発電だけに使い、走行は100%電気モーターで行うというユニークなシステムだ。
エンジンとモーターを併用しているという意味ではハイブリッド車(HV)なのだが、エンジンを駆動用ではなく発電機専用として使うところが従来のHVとは違う。ガソリンエンジンで発電するとはいえ、走りの性能は電気自動車(EV)そのものなので、充電不要のEVともいわれている。
e-POWERの開発責任者である仲田直樹は、根っからの車好きだ。学生時代の愛車は「スカイラインRS」で、「世の中で一番速いといわれていた類いの車」である。実は、当時車以上にハマっていたのがバイクで、「いわゆる“走り屋”だった」と振り返る。
車は単なる移動手段ではなくて、移動を楽しむもの。だからこそ“走り味(あじ)”が大事──。後に自動車メーカーのエンジニア人生を歩むことになる仲田の基本スタンスは、このとき培われたものだ。
大学の専攻は電気電子工学。モーター発電機を扱う研究室で、重電メーカーへ就職する学生が多かったが、「しがらみが残る閉鎖的な業界よりも、ものづくりの仕事がしたい」と日産への就職を決めた。