9月初旬、「非常に強い勢力」で日本に上陸し、関西を中心に甚大な被害をもたらした台風21号。それから1ヵ月も経ない間に、やはり非常に強い台風24号が日本を襲った。非常に強い台風が立て続けにやってきて、大きな被害がもたらされるのはなぜか。これから日本を襲う強い台風が増えるという話は本当なのか。気象学の権威である新野宏・東京大学名誉教授が、日本人が心得るべき台風のリスクについて教える。
これまでとは明らかに違う?
台風21号の被害はなぜ拡大したか
8月下旬に発生した台風21号は、9月4日、25年ぶりに「非常に強い」勢力で日本に上陸し、近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした。なぜ、これほどまでに被害が拡大したのか。
21号の上陸時の中心気圧は、約950hPa(室戸岬では954.7hPa)と、第二室戸台風の925hPa(室戸岬では930.4hPa)に比べると高かったが、サイズがコンパクトだったため、中心付近で非常に急な気圧勾配を持っており、第二室戸台風に匹敵する強い風が吹いたと思われる。
私はちょうど21号が来たときに大阪におり、ホテルで缶詰めにされていたが、19階建ての建物全体がギシギシと揺れ、ものすごい風だった。モノが飛んで来てホテルのロビーのガラスが割れ、大騒ぎになった。子どもの頃に神戸で経験した伊勢湾台風(1959年/上陸時の中心気圧929hPs)、第二室戸台風(1961年/925hPs)にも劣らぬ脅威を感じた。
また、大阪と神戸では高潮も、観測手法の変化はあるが、第二室戸台風を超えた。台風の移動速度が時速60km以上と速かったため、短時間で急激な暴風雨に襲われる地域が続出した。台風を押し流す周囲の風が台風の渦巻く風に加わっていたため、台風中心の東側で特に強い風が吹いた。
この21号に象徴されるように、今年は台風が多いという印象がある。6月~8月は過去67年間の平均の11.6個に対して18個と発生数が多かった。こうした状況を見て、巷からは「今年の台風の傾向は異常だ」「地球温暖化の影響を受けているのではないか」といった声が聞かれるようになった。果たして、本当にそうなのだろうか。