薬局戦争CASE1

初の“1兆円メガ薬局”の誕生――。ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)とココカラファインが、経営統合に向けた協議に入った。これが意味するのは、店舗数が2万店舗を超えて競争が激化するドラッグストア業界における、1兆円規模の巨大再編時代の幕開けだ。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

「専門性のあるカテゴリーで1番に」
化粧品3300億円で2位に倍以上の差

 「ドラッグストア業界は今後、売上高1兆円超の5陣営程度に収斂される。急速な寡占化が進むのは間違いない」――。

 ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)とココカラファインが、経営統合に向けた協議入りを記者会見で表明した8月22日、ある業界関係者は、そんな再編予想図を描いてみせた。

 今回の統合が実現すれば、最大手のツルハHDを抜いて、業界初の“1兆円メガ薬局”が誕生する。

 この統合によりマツキヨ&ココカラが手にするのは、圧倒的なバイイングパワーだ。規模の経済で仕入れ原価を引き下げ、メーカーを従えてより利益率が高いプライベートブランド(PB)の開発力を向上させる。消費者とすれば、より安く、より多彩なオリジナル商品を選べるようになる。

 そうなれば競合他社も指をくわえて見ているだけではいられまい。「生き残りを懸けた1兆円規模のM&A(企業の合併・買収)が本格始動する」(冒頭の関係者)というわけだ。

 ただし1兆円への到達だけが、ココカラがマツキヨを選んだ理由ではない。ココカラに対して同じく経営統合を申し入れたスギHDと仮に経営統合しても、同規模程度の売上高に達するからだ。

 この点について、マツキヨの松本清雄社長は22日の会見で「かつてのマツキヨがそうだったように、売り上げの規模だけを取りにいくと収益性が悪化する。売上高全体ではなく、専門性のあるカテゴリーで1番にならないといけない」と話した。

 ではマツキヨが、競合他社と比して特に専門性を持つカテゴリーとは何か。化粧品である。

 2019年3月期におけるマツキヨの化粧品売上高は2277億円で全体の4割を占める。医薬品や食品などを合わせた売上高全体では業界5位のマツキヨだが、化粧品に限った売上高ではライバル他社を大きく引き離して単独1位だ。

 一方のココカラも化粧品の売上高構成比は3割に達し、19年3月期は1080億円。この2社が組めば、化粧品売上高は3300億円を超える規模となり、2位のサンドラッグに倍以上の差をつけることになる。

 化粧品販売におけるマツキヨの強みは、登録販売者の資格を持つ化粧品担当者がカウンセリングで得た、膨大な顧客データにある。

 マツキヨはこのデータを化粧品メーカーにフィードバックして商品開発を進めており、ここにココカラの顧客データが上積みされれば開発レベルは高まり、より洗練される。現在10%程度のマツキヨのPB売り上げ構成比はさらに拡大するとみられ、ココカラとしてもマツキヨPBで販売力を強化できるのだ。