米国雇用統計は、強弱入り混じるも総じて堅調であり、労働需給がさらに強まっていることを示す内容であった。米国経済は、個人消費を中心とした内需が引き続き底堅く拡大することが見込まれる。
金融市場の利下げ期待も和らぎつつあり、利下げの必要性が低下している。ただし、ISM指数によって内需に減速懸念が生じる中、10月のFOMCに向けては米中貿易交渉の行方と小売売上高が大きなカギを握るだろう。
労働需給のさらなるひっ迫を
示す9月米国雇用統計
2019年9月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から13.6万人増加と、市場の事前予想である+14.5万人を下回った。しかし7月、8月分が改定され、それぞれ+16.6万人(改定前:+15.9万人)、+16.8万人(改定前:13.0万人)と上方改定された。昨年までの増加ペースからは減速しているものの、引き続き雇用者数は堅調に増加していると判断できるだろう。
業種別に見ると、製造業は前月差▲0.2万人と6ヵ月ぶりの減少に転じた。自動車を筆頭に幅広い業種で雇用が減少した。
また、民間サービス部門は同+10.9万人と8月(同+12.1万人)から若干増加ペースが鈍化したものの、底堅い推移となった。小売業で雇用の減少が続いたものの、運輸が増加に転じ、専門サービスや医療などで増加が続いた。
失業率は3.5%と8月から0.2%pt低下、労働需給がさらに引き締まったことが示された。また、就職を諦めた者の減少などにより、より広義の失業率(U-6)は6.9%と前月から0.3%pt低下しており、一般的な失業率で見る以上に労働需給がひっ迫していているとみられる。背景には、現役世代(20歳~54歳)の労働参加率が82.6%とリーマンショック前の水準近くを維持、追加的な労働供給力が低下していることが挙げられる。