「デジタル化」さえ進んでいない企業で
DXを進めようとしてもうまくいかない

 DX実現のためには、まず「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」が進んでいることが前提となります。デジタイゼーションとはデジタル化のこと。今まで紙とハンコで進めてきた業務をペーパーレス化する、というように、アナログなものをデジタル情報として扱えるようにすることです。

 デジタライゼーションは、デジタイゼーションでデジタルに置き換えたデータを利用することで、さらにビジネスや業務全体を効率化することを指します。基本的には既存の事業をいかに効率化するか、というのがデジタライゼーションで進める部分です。

 DXは、デジタイゼーション、デジタライゼーションを前提として、既存事業ではなく、新規事業や事業の変革を考えていくことです。ところが日本では、デジタイゼーションもまだ進んでいないのに、いきなりDX推進を考える企業が多く、DXが進めにくい要因のひとつとなっています。

 DXを進めたいなら、まず紙とハンコの世界をデジタル化するところから始めるべきです。技術を使うときには、人が変わらなければいけないし、技術の可能性を信じて投資していこうというマインドセットも作っていかなければなりません。そのためにもまずは、デジタイゼーション、デジタライゼーションを進めて、下地を作ることが有効です。

 また、デジタイゼーション、デジタライゼーションは技術を取り入れれば何とか進められますが、DXを進めて事業を変革するには、人と組織が変わる必要があります。少なくともデジタイゼーション、できればデジタライゼーションが進んで、土台が整ってからDXを推進したほうがよいでしょう。