先日発表された12月の米国雇用統計は、雇用の拡大ペース、賃金上昇率が前月を下回ったが、労働需給は引き続きタイトであり、雇用者数もならせば堅調に推移している。米国経済に関しては、内需拡大が続く中で政治面での不透明感払しょく、緩和的な金融政策がサポート役となり、2020年は好スタートを切る見込み。しかし、米国経済の底堅い成長が続くことでインフレ圧力が高まり、年後半にはFRBの利上げの可能性も含めて、インフレ動向に注意が必要となるだろう。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
2019年12月は減速も
雇用は通年で堅調に拡大
2019年12月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から14.5万人増加したが、25.6万人増加した11月からは拡大ペースが減速した。2019年通年では1カ月あたり平均17.6万人増であったことから、12月は最近のペースも下回ったことになる。
業種別にみると、製造業は前月差▲1.2万人と減少に転じた。11月はゼネラルモーター社従業員のストの反動で大幅増となったが、12月はその効果が剥落した。雇用の大半を占める民間サービス部門は、うち項目である小売が同+4.1万人とマイナスであった11月から大幅な増加に転じ、事前予想通り年末商戦が堅調に推移したことがうかがえる内容であったものの、11月に急増した医療や専門サービスの増加幅が縮小したことなどにより、全体では同+14.0万人と11月(同+19.1万人)から減速した。
しかし、雇用者数の増加幅は変動が大きいため、3カ月平均などでならしてみれば、引き続き底堅く推移している。また暦年で見ると、2018年は1カ月あたり22.3万人の増加であったため、2019年(17.6万人)は減速したが、2017年(17.9万人)と同程度の拡大ペースを維持した。2018年は景気拡大が続く中で大型減税が景気をさらに刺激したため、雇用の拡大ペースが特に早かったと言え、2019年は減税効果が剥落する中で堅調に推移したと評価できるだろう。