先日発表された2020年1月の米国雇用統計は、引き続き雇用・所得環境が堅調に改善していることが示された。さらに統計の改定を受け、1月単月だけでなく2019年後半以降の雇用・所得環境は、従来見てきた姿より力強い状況であることがわかった。米国経済に関しては、2019年10-12月期GDP成長率が個人消費の減速などにより若干伸び悩んだが、経済のファンダメンタルズは底堅く、再び拡大に転じることが期待される。それに伴いインフレ圧力も高まると見られるが、足元で流行が拡大している新型コロナウイルスなど新たな不確実性が台頭、状況を注視する必要があるだろう。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
好スタートを切った
米国の雇用環境に死角はないか
2020年1月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から22.5万人増加し、14.5万人増であった2019年12月から拡大ペースが加速した。過去分については、2019年11月、12月がそれぞれ小幅ながら(+0.5万人、+0.2万人)上方改定された。
業種別に見ると、建設業が前月差+4.4万人と急拡大した。2019年12月の住宅着工戸数が前月比+16.9%と急増したように、この冬は比較的温暖であったため、建設関連の活動・雇用増につながったとみられる。
また、雇用の大半を占める民間サービス部門も、小売業が急増した前月の反動で減少に転じたものの、教育・医療、輸送など幅広い業種で増加幅が拡大した。他方、製造業は自動車関連の減少によりマイナスが続いた。
なお、2020年1月分の統計発表と同時に、雇用者数や賃金の基となる事業所調査においてベンチマーク改定、季節調整替えが行われ、過去の数値が変更された。今回の改定で、雇用者数の「水準」は下方修正されたが、注目すべきは雇用の拡大・縮小ペースを表す「変化」である。
改定により、2019年後半の雇用拡大ペースが総じて上方修正されており、例えば2019年12月の雇用者数は3か月移動平均が、前月差+18.4万人(改定前)から同+19.8万人(改定後)と増加した。最近の雇用増勢は従来見てきた姿より力強いことが示されたと言えるだろう。2020年1月の結果は好天など一時的な押し上げ要因の影響があるものの、雇用の堅調な拡大ペースは維持されている。