地域銀行が苦境から脱する手段として選ぶ他行との経営統合。果たして成果を生んでいるのだろうか。そして今、地銀トップに求められるものは何か。特集『選別される銀行』(全15回)の#3では、歴代金融庁長官の中でも最も地銀への問題意識が高いとされる遠藤俊英長官のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)
福岡銀行の統合は戦略的
地域に付加価値を提供している
――意味のある地域銀行の統合・再編とは、どんなものだと考えますか。
何のために統合・再編するのか、それによって新しい金融機関がどのような姿になるのか、そして、何をやりたいのかという目標がはっきりしていることが重要だ。
もちろん目標が結果と乖離することはあるかもしれない。しかし、これまでの再編は「金融庁がいろいろ言うから取りあえず」というような、「ため」にするものがあったのは否定できない。お互いに「領海侵犯はやめよう」という意味で持ち株会社だけをつくり、地元におけるそれぞれの地銀の在り方は変わらないような再編だ。
きちんと哲学が語れないような統合は、後から議論してみても、「あれは何だったんだろうな」というものになってしまう。
経営統合によってシステムを統合し、支店を統廃合して、全体として経費を下げ、収益を安定化させる。ただ、それだけでいいわけではない。融資の際の事業性評価にしても顧客企業の本業支援にしても、地域経済や地域企業をいかに支えるのかを考えたときに、単独銀行では物足りない、あるいはこれでは駄目だと考え、そこで初めて別の銀行と手を携えて統合しようという話になるのではないか。
自分たちの収益安定という目標はもちろんあるだろうが、それ以上に地域に対する貢献が増すということがなければ、地域における統合の意味は減殺されると思う。それが欠けるのが、これまでの地銀の統合であったと思う。
――目標を共有したり、地域に貢献しているとみられる統合のケースはありますか。