地銀再編の台風の目となっているSBIホールディングスが、新たに地方創生の支援会社を立ち上げる。メガバンクや保険会社など、他の大手企業から300億円規模の出資を募るという新会社は、SBIが進める不振地銀の救済にどう絡んでくるのか。特集『選別される銀行』(全15回)の#5では、地銀業界が凝望するSBIの動向に迫った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
SBIが第4のメガバンク構想を発表
島根銀、福島銀など次々に資本提携
人間誰しも、二者択一を余儀なくされる瞬間がある。それは、極度の経営不振に陥った地域銀行の経営陣にも迫りつつある。ある大手証券会社幹部は、今の地銀業界を見渡してこう言い放った。
「野村證券にすがるか、SBIにすがるか。究極の二択だ」──。
なぜこの2社なのか。それはどちらも昨年に、従来はなかった地銀提携のかたちを示したからに他ならない。
野村證券が打ち出したのは、個人向け証券ビジネスの包括的業務提携だ。地銀の顧客が持つ証券口座を野村證券に移管し、口座やシステムの管理を同社が担う。さらに地銀には、野村證券の営業マンが出向して営業推進を行う。同社は、すでに山陰合同銀行(島根県)と阿波銀行(徳島県)でこの提携を実現した。
金融業界ではこの取り組みに対して、不採算な営業地域の改革を図りたい野村證券の「体のいい店舗と人員のリストラ策だ」(別の証券会社幹部)という見立てが出ている。ただ地銀にとってみれば、投資信託販売システムなどの保守運用がなくなるだけで「年間で10億円近い経費が浮く銀行もある」(地銀関係者)のに加え、強力な営業ノウハウを自らの銀行内に取り込めるというメリットがあるのは間違いない。地銀が取り得る異業種連携の選択肢の一つだろう。