「上場している理由は見えだけ」──。こんな言葉も市場関係者から出る。時価総額や売買高という市場での評価が振るわない地域銀行は少なくない。東証市場改革がこうした地銀への最後通告となるとの指摘も出ている。特集『選別される銀行』(全15回)の#12では、市場からの退場を宣告されかねない地銀の実態をレポートする。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)
投資家不在のIR説明会
ダークスーツの男たちの正体は?
昨年6月、中部地方を拠点とする地域銀行の会議室。東証1部に上場する地銀が、2019年3月期決算に関する投資家向けIR説明会を開いた。会場には、ダークスーツに身を包んだ総勢60~70人ほどの金融マンたちが詰め掛けた。
一見盛況に見える説明会だが、そこには運用会社のファンドマネジャーやアナリストら、投資家の姿はほとんどない。参加者のほとんどは国内外の証券会社のセールスマンや、地元の証券会社の支店長らである。地銀に債券や投資信託、仕組み債などの運用商品を売り込むためだ。頭取のプレゼンテーションが終わると、ずらりと列を成し、名刺交換にいそしむ。なんのことはない、証券会社の営業の場と化しているのである。
こうした投資家不在のIR説明会は決して珍しいことではない。地銀株の長期低迷で、投資家離れが止まらないためだ。
地銀株の市場の評価は惨憺たる状況だ。例えば、企業の株価が割安か割高かを判断する株価純資産倍率。1倍を割れていると、全ての株を買い占めた上で企業を解散し、資産を売却すれば利益が出る水準となる。3月17日の終値ベースで、上場企業を割安な順に並べると、上位20社のうち、15社を地銀が占める。しかも、上位10社は全て地銀という体たらくだ。