先日発表された2020年3月の米国雇用統計は、2月までの底堅い雇用環境から一転、新型コロナウイルスの影響で大幅な悪化が見られた。感染拡大が継続する中、4月にはさらなる悪化を免れない見込みである。米国政府、FRBは矢継ぎ早に対策を打っており、感染拡大が早期に抑制されれば経済活動の正常化に伴って雇用環境も回復することが期待される。しかし、仮に長期化した場合は経済・雇用環境が構造的なダメージを受け、未曽有の「雇用危機」が生じる恐れがある。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
新型コロナ禍で3月雇用統計は
リーマンショック以来の悪化
2020年3月の米国雇用統計では、最も注目される非農業部門雇用者数(事業所調査)が前月から70.1万人減少した。雇用者数が減少するのは2010年9月以来、約9年半ぶりとなる。リーマンショック後で減少幅が最も大きかった2009年3月は前月差▲80.0万人だったことから、今回がいかに大きな落ち込みであったかがわかるだろう(図表1参照)。
業種別に見ると、民間サービス部門が約▲66万人と減少分の大宗を占めた。その中でも、飲食業が約▲40万人と全体の60%程度を占めるほどの規模であった。他方、飲食業以外のサービス部門や、製造業や建設業などの生産部門も幅広く減少したものの、相対的に減少幅は大きくない。
飲食業が先んじて大幅に減少したのは、いち早く新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたためである。3月13日の国家非常事態宣言をはじめ、海外からの入国制限、州政府による非常事態宣言など、2月下旬から3月中旬にかけて状況の緊迫度が増した。併せて消費者の活動が一気に抑制されたことから、直接的に影響を受ける飲食業が打撃を受けたと見られる。