フォロワー20万人超! 仏教の視点をもって、国内外の方々から寄せられた「人間関係」「仕事」「恋愛」「健康」などの相談に応えるYouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」が人気爆発。
「実際にお寺に行かなくてもスマホで説法が聞ける」と話題になっています。
その大愚和尚はじめての本、
『苦しみの手放し方』が、発売になりました。
大愚和尚は、多くのアドバイスをする中で、
「苦しみには共通したパターンがある」「多くの人がウソや偽りを離れて、本当の自分をさらけ出したいと願っている」「苦しみを吐き出して可視化することによって、人は少し苦しみを手放すことができる」ということに気づいたといいます。
そんな和尚の経験をもとに、この連載では
『苦しみの手放し方』から、仕事、お金、人間関係、病気、恋愛、子育てなど、どんな苦しみも手放せて、人生をもっと楽に生きることができるようなヒントになる話をご紹介していきます。

僧侶が、長寿の職業と呼ばれる「5つ」の理由

法然上人80歳、親鸞上人89歳、
栄西(えいさい)禅師74歳、一休禅師88歳

 名僧といわれた人たちは、長寿が多い。
 法然上人80歳、親鸞上人89歳、栄西(えいさい)禅師74歳、一休禅師88歳……。
 40歳で高齢者といわれた時代に、はるかに長寿です。

 前述した福島県立医科大学の森一教授の調査では、僧侶が長生きする理由として、「食事」と「瞑想(めいそう)」の2つを挙げています。

 「①食事」……「食べ過ぎなどに注意して、摂生を心がけている」
 「②瞑想」……「瞑想の時間を取り、精神的なゆとりを持っている」

 私も、この2つの理由には賛成です。
 禅寺では「食事」も仏道修行のひとつですから、度を過ごして飲食することはありません。低カロリー・低脂肪の精進料理を、毎日決まった時間にいただきます。
 禅寺で「粥(かゆ)」を食べるのは、道元禅師が「粥有十利(しゅうゆうじり)」(粥には十の功徳がある)と考えていたからです。
 日常的に「瞑想」することも、心身をリラックスさせる上で大切です。
 僧侶も人間ですから、ときには悩み苦しんだり、心が波立ったり、感情を持て余すことがあります。
 しかし、それでも僧侶が凜として見えるのは、「怒り」「悲しみ」「憂い」「思い」といった感情を坐禅や瞑想、読経(どきょう)によって鎮(しず)め、引きずらないようにしているからです。

 私は、「①食事」と「②瞑想」のほかにも、長寿の理由があと「3つ」あると考えています。「③睡眠」「④呼吸」「⑤運動」です。
 私は毎晩、夢も見ずにぐっすり眠っています。「夜中に何度も目が覚める」ことも、「よく寝た気がしない」こともありません。
 「睡眠」の質が高いのは、「早く寝る」からです。禅寺の僧侶は、午後10時には就寝し、日の出前(午前4時か午前5時)に起床します。

 私は以前、整体師として睡眠指導も行っていましたが、患者さんには、睡眠の質を変えたいなら、「早起き」よりも、「早く寝る」ことを心がけてください、とお伝えしていました。
 禅寺の僧侶に倣って、「3日間」だけでいいので「午後10時前に寝る」ようにすると(朝は、自然に目が覚めたら起きる)、それだけで身体の代謝も、頭の回転も格段に速くなります、とアドバイスしていました。

 次に「呼吸」ですが、「長生き」は、「長息(ながいき)」からはじまります。
 僧侶は、坐禅を組むときも、読経するときも、長く息を吐いています。深くゆっくりとした呼吸は、副交感神経の働きを高めるので、リラックス効果が期待できます

 そして最後は、「運動」です。
 禅寺では、生活の中でじつによく体を動かします。
 たとえば、掃除。私が修行をした曹洞宗大本山「總持寺」は、廊下をすべてつなげると8キロにもなる。それを毎日、ぞうきん掛けします。
 本堂は、畳千畳敷き(1008畳)の広さです。掃除機などは使えませんから、お寺の掃除は、常に全身運動です。
 僧侶を長生きにしている理由は、「①食事」「②瞑想」「③睡眠」「④呼吸」「⑤運動」の「5つ」が、生活の中に自然と溶け込んでいるからです。

 ですがそれ以上に、お釈迦様の「ある教え」が、僧侶の長寿を導いていたと私は考えています。その教えとは……、
 「自分の心を傷つけてはいけない」
 「自分を大事にしなければいけない」

 という教えです。

 仏教は、数千年という歴史の中で、「自分を傷つけるもの」を排除してきました。
 しかしそれは、「長生きすること」が目的だったわけではありません。「自分も、他人も傷つけない」ためにどう生きるかを追究した結果として、「長寿」という恩恵を受けるに至ったのです。
 お釈迦様が、他人を傷つける行為をいさめたのは、他人の悪口や非難が、いずれ自分に返ってきて、自分自身を傷つけることになるからです。
 他人を傷つけなければ、自分が傷つくことはありません。
 自分が傷つかなければ、他人を傷つけることもありません。
 この「5つ」を実践することは、健康はもとより、自分も他人も、幸せな人生に近づくことでもあります。
 みなさんも、自分を大事にするために、そして、他人を大事にするために、禅寺の生活スタイルを取り入れてみてはいかがでしょうか。

(本原稿は、大愚元勝著『苦しみの手放し方』からの抜粋です)