6月5日に発表された2020年5月の米国雇用統計は、新型コロナウイルス禍により歴史的悪化となった4月に続いて悪化することが見込まれたが、ふたを開けてみれば雇用環境好転の兆しがみられる内容であった。単月とは言え、足元の雇用環境は想像していたものより力強いことが示された。一方、改善したものの雇用環境はコロナショック前と比べれば非常に悪く、今後の回復ペースが注目される。ただし、雇用回復の前提となる行動制約の緩和は感染状況とのバランスが求められ、依然予断を許さない状況が続く。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
予想よりも早く回復基調に
5月雇用統計の「中身」
2020年5月の米国雇用統計では、最も注目される非農業部門雇用者数が前月から+250万人増加した。過去最大の減少幅(2,000万人超)を記録した4月の落ち込みに比べると5月の増加は小幅に見えるかもしれないが、単月とは言え増加幅は過去最大であること、従来、雇用回復は少なくとも6月以降と予想されていたことを考えれば、上出来過ぎる結果と言えるだろう。
業種別にみると、4月に1,700万人超減少した民間サービス部門が5月は200万人超の増加に転じた。特に4月時点で落ち込みの大きかった飲食サービス、小売業などで持ち直しの動きが見られた。
これらの業種は、コロナショックに伴う行動制約の影響を直接的に受けていたが、4月下旬以降、様々な州で行動制約が緩和される中で営業を再開、労働力が必要になったとみられる。