8月7日に発表された2020年7月の米国雇用統計は、改善に転じた5月から回復が続いていることが確認された。ただし、そのペースは鈍化しつつあり、依然コロナショックの影響が半分程度払拭されたに過ぎない。今後については、感染再拡大に伴って行動制約が再び厳格化されつつあることに加え、大統領・議会選挙を11月に控える中でコロナ対策が政争の具にされ、雇用環境の改善が頭打ちとなる可能性が高まっている。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
コロナショックからようやく
半分取り戻した7月雇用統計
2020年7月の米国雇用統計では、最も注目される非農業部門雇用者数が前月から+170万人超増加した。新型コロナ感染拡大の影響を受け、4月には2000万人超減少したが、5月(+約270万人)、6月(+約480万人)と回復が続いている。
7月は伸び幅が縮小したものの、回復傾向継続が示された。5月以降で雇用者数は1000万人弱増加し、コロナ禍での減少分をようやく半分取り戻したことになる。
業種別では、消費者の行動量に特に影響を受ける小売業や飲食業が、引き続き全体の増加をけん引したが増勢は鈍化。同じく消費者の行動に影響を受ける宿泊業は6月にようやく増加に転じたものの、7月は前月と同程度の雇用者数となり、増勢を維持できなかった。
また、製造業も5月、6月は2桁万人の増加であったが、7月の増加は3万人弱に落ち込み、増勢が一服した。全体的に増勢は続いているものの、そのペースは減速しつつあり、回復が頭打ちとなっている業種も散見される。