乱戦!証券サバイバル#1Photo:PhotoAlto/Milena Boniek/gettyimages

ネット証券で昨年末に突如勃発した手数料値下げ競争。「やられたらやり返す」か「やられる前にやる」か――水面下で各社トップの神経戦が続く。一方、これまで対面の営業力が強みだった総合証券も、値下げ競争とコロナ禍に巻き込まれる形で揺らいでいる。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#1は、証券業界で激化するサバイバルの実態に迫った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

SBIの手元に5社の買収先リスト
年度内のM&Aで手数料ゼロに布石

 手元には5社のリストがある。インターネット証券最大手のSBIホールディングス(HD)が今、買収を検討している候補企業だ。

 関係者によれば、SBIHDは年度内にも買収を実行する計画で、既に社長の北尾吉孝自らが水面下で相手先との交渉を進めているもようだ。その北尾は「コロナで資産価値が下がり、売り物が増えている。この好機を逃すわけにはいかない」と話す。

 新型コロナウイルスの感染拡大でマーケットが荒れ、株式や債券の取引量が増えたことにより、2020年4~6月期は大手証券各社に多額の利益をもたらした。SBIHDの収益は四半期決算で過去最高の1111億円に達する。その一方でコロナが逆風となった事業会社は無数にある。

「株を買うより時を買え」の相場格言通り、今が勝負の「時」と見た北尾の動きは早かった。7月にはユーロ円建て転換社債(CB)を発行、700億円の「軍資金」を調達している。

 SBIHDがM&A(合併・買収)を急ぐ理由は何か。そのヒントは、7月末に公表したライブスター証券の買収にある。