松井証券で6月、創業家以外から初の社長に就いた和里田聰氏。中小地場証券を先進的なネット証券へと導いた「業界の風雲児」松井道夫氏の後を継ぎ、1918年創業の老舗の看板を守れるか。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#12では、和里田社長のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
株式売買の一本足打法に限界
カリスマ依存体質から脱却
――各社が手数料依存から預かり資産重視に収益構造をシフトさせている。松井証券が今、注力していることは。
われわれは今まで株式売買の一本足打法だった。それが松井道夫前社長の「選択と集中」だ。最も収益性の高い、株式のブローカー業務に経営資源を集中させてきたが、結果として他社に比べて商品のラインアップで劣っていた。
例えば他社は10年以上前からFX(外国為替証拠金取引)の仲介で収益を上げてきたが、われわれはそれほど注力してこなかった。投資信託に至っては2016年12月に始めるまで一切手掛けていなかった。
その集中と選択、株式一本足打法を採用した背景にはやはり、まだまだ個人投資家の裾野が広がっていない、個人の株式売買がもっと増える成長市場だという前提があったと思う。
僕もそういう期待を持っていた。しかし売買代金に占める個人のシェアは低水準のままだ。株式投資に参加する人が飛躍的に増えている状況ではない。
株式一本足打法だけでは難しいのでFXのサービスも強化していく。投資信託もまだまだ他社の背中は遠いが、いわゆるリスクの低い資産形成を考えるお客さまを獲得し、残高を積み上げて収益を上げていく。
――松井証券は、取引頻度の高いスーパーアクティブトレーダーが多く「尖った」イメージがあるが、丸くなってしまうのか。