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11月6日に発表された2020年10月の米国雇用統計では、雇用環境の回復が続いていることが確認されたが、一部に綻びが見られる。さらに、足元で新型コロナの感染が再拡大しており、景気の先行き不透明感が高まっている。景気の落ち込みリスクを低減するため早期の追加経済対策の成立が求められる。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
年末を控え不安感が募る
10月雇用統計の中身
2020年10月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+64万人増加し、コロナショック後の回復局面が継続していることが確認された。しかし、増勢は5月+273万人、6月+478万人、7月+176万人、8月+149万人、9月+67万人と趨勢的に鈍化している。(図表1参照)。
業種別には、コロナショックのダメージを強く受けたのち回復途上にある宿泊・飲食業などで、増勢の鈍化が見られた。後述するように、9月以降新型コロナの感染が再拡大する中、人々の外出行動は伸び悩んでおり、宿泊・飲食など外出に関連する業態の回復を抑制したと見られる。
一方、建設業や小売業、臨時雇用などでは増勢が加速した。建設業は堅調な住宅需要を映じた動きと見られるが、小売業や臨時雇用は加速が一時的に留まる恐れがある。
なぜなら、通常であれば小売業の年末商戦は11月末に開始されるが、今年はコロナ禍で密を避けることや物流の混雑を低減することなどを目的に、セール前倒しの動きが見られるからだ。セール前倒しが年末商戦全体に与える影響は不透明であり、労働需要の先食いが生じた可能性も否定できない。年末にかけて、小売関連の雇用に注目したい。