少し気が早いですが、2024年の大統領選挙で注目を集めそうなのは誰でしょうか。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載10回目となる今回は、2024年の米国大統領選挙の行方について、何がカギとなるのか解説します。
人種差別問題が2024年の大統領選挙のカギ
2016年の大統領選挙でトランプが勝利した瞬間は、世界が驚愕と衝撃に揺れました。政治経験のないトランプ大統領が打ち出す政策は、当初はポピュリズムの極みであると散々バカにされ、誰もが長くは続かないと思っていました。
ところがトランプ大統領は公約通りにメキシコとの壁の建設を進め、イランでは革命防衛隊のコッズ部隊の司令官と副司令官を殺害し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談も実現させました。
唯一想定外だったのは、新型コロナウイルスの感染拡大と白人警官による黒人殺害が世界規模の人種差別抗議へ発展したことでしょう。
2020年の大統領選挙で勝利した民主党のバイデン候補の経済政策は、トランプ大統領の実践している政策に、温暖化防止や経済格差是正のための経済刺激策「グリーン・ニューディール」、つまりはサンダース上院議員の社会民主主義的政策と、福祉政策を加えたばらまきが主であり、外交政策についても米中対立などの姿勢はトランプ大統領が実践してきたものと大きな違いはありません。