2020年から続いてきた、英国のEU(欧州連合)離脱移行期間が終わり、ついに2021年からはBrexitの効果が生じるようになります。交渉が長引いてきた英国とEUのFTA(自由貿易協定)交渉は2020年12月下旬に大枠で合意する。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末について紹介します。連載12回目となる今回は、2021年以降のBrexitの行方について解説します。

2021年、Brexit後の英国は米英FTAで復活するPhoto: Adobe Stock

米英FTAで復活する英国

 英国は2020年1月末にEUからの離脱を確定しました。

 どんなにボリス・ジョンソン首相の強いリーダーシップがあったとしても、EUに加盟していた時のメリットが失われれば英国は経済に深刻な影響が出るだろう。世界はBrexit後の英国についてそう考えていました。さらに新型コロナウイルスの影響で英国を取り巻く環境は一層厳しくなるという見方もありました。

 果たして本当に英国の先行きは悲観的なのでしょうか。米国の存在を加味してBrexit後の英国について考えると、少し見方が変わります。米国の存在というのは、具体的に言えば米英の自由貿易協定(FTA)などによる経済的な結びつきの強化を指します。

 ジョンソン首相は英国の国益重視を大前提に、常識や慣例にとらわれずに経済合理性を重視した自由主義と規制緩和を支持してきました。結果に結びつかない理想主義が嫌いで、貿易秩序の再構築を目指し、型破りな部分もあるため、多くの人がトランプ大統領に似た印象を持っているのではないでしょうか。国際社会の中では、“暴れん坊”とされるリーダーの一人です。

 彼の考え方の基本はEUのような多国間連合を含む国際協調主義から英国を救い出すことにあります。そのためにメイ首相のあとを継いでBrexitを実現させたのです。

 あまり知られていませんが、米国と英国は貿易において競合する部分がそれほどありません。また安全保障面でも互いを最も重要な同盟国に位置づけているので、米国と中国の新冷戦が本格化すれば、今は中国に理解を示している英国が態度を変えて米英連携を強める可能性もあります。実際、2020年7月には米国の呼びかけに応じてファーウェイの動きを規制し始めています。

 これは1980年代にあったレーガン=サッチャー(マーガレット・サッチャー)関係のようなもので、実現すると第二次世界大戦時のルーズベルト=チャーチルに次いで、3度目のアングロサクソン連合となります。歴史が繰り返される可能性は決してゼロではないでしょう。