高いお金を払って旅行に行っても混雑して疲れるだけなら、行かなければよかった(あるいは、だから旅行には行かない)…という方は意外と多いかもしれない。そうした国内旅行者の満足度を上げ、さらには「どうせ疲れるから行かない」という潜在需要を掘り起こすために、星野リゾート代表・星野佳路さんが是が非でも実現したい、と長年訴えている施策とは?(構成/斎藤哲也)
需要の平準化で何が変わるか
持続可能な観光業を実現するために、私が長い間主張し続けていることがあります。
それは「需要の年間平準化」であり、大きな観光需要を生み出している日本在住者が、休日を分散して取得できるようにすることです。
現状、多くの観光地では、5月のゴールデンウィーク、夏休み、祝日を含めた三連休、そして土曜日と日曜日など、いわゆる繁忙日には人が溢れかえって宿泊費も高くなります。一方、それ以外の閑散日の需要は極端に下がり、宿泊費も下がります。私の経験値からいえば、年間で繁忙日が100日、閑散日が265日という割合で、閑散期が倍以上を占めます。
多くの人は、長期の休みを取ろうとするとゴールデンウィークなど同じ日程に集中してしまいます。すると高速道路は渋滞し、観光地は混雑し、宿泊費も高くなり、結果的に顧客満足度を下げています。せっかく高いお金を払って旅行に行っても混雑して疲れるだけならば「旅行に行かない」という、顕在化していない需要も相当あると考えています。
休日を分散化させることで需要を平準化できれば、これらの問題の多くが改善します。すなわち、観光地の混雑や交通渋滞も緩和し、旅行の満足度が上がります。需要集中を解消すれば宿泊費や交通費の価格は下がるので、年間の旅行回数が増したり、1回当たりの滞在日数を増やすことも可能になります。これまでの「あきらめ層」の需要を喚起することもできるでしょう。
休日分散化の恩恵を受けるのは、旅行者サイドだけではありません。