観光地が掲げる、さまざまなコンセプト。しかしさまざまな理由から、特徴のないコンセプトに落ち着いてしまうことも多い。お客さまの心にしっかり届くコンセプトはどのように作ればよいのか。星野リゾート代表・星野佳路さんが考える、観光地(施設)のコンセプト作りの要諦を紹介する。
切れ味のないコンセプトはコンセプトにあらず
「悠久の古都の美をいまに伝える●●(地名)のホテル」
「標高●(数字)メートルのウェルネスリゾート」……などなど。
ホテルや観光地について、「うたい文句」をご覧になる機会は多いと思います。
いわゆる「コンセプト」を簡潔に伝えるもので、その施設や地域の魅力を表すものです。観光地の場合には皆が同じ方向に取り組んでいく上で、この「コンセプト」が決まっているかどうかは大変重要です。
観光で成功している地域には、たいてい明確なコンセプトが備わっています。
例えば、箱根のコンセプトは「温泉」です。いま、箱根で新しい宿泊施設を始める場合、温泉を外して成功するケースはないでしょう。いわば、箱根という観光地に期待される要素は温泉なのです。
寺社仏閣の集まる京都であれば、「和」や「日本文化」がコンセプトです。京都の観光事業者はみな「和」や「日本文化」を意識して、サービスを展開しています。
このような事例を見れば、コンセプトが重要であることは理解しやすいのですが、現実を見ると、コンセプトづくりの失敗例には事欠かないのです。
星のや富士が「富士山の画像を禁止」した理由
ありがちなのは「夜空の星の美しさ」をコンセプトにするケースです。