2020年はコロナ禍で店舗休業を余儀なくされ、在庫処理に悩まされたアパレル企業。しかしこの難局を機に、ビジネスモデルの転換を模索する企業も出始めた。苦境のアパレル業界の中で、回復する可能性の高い企業はどこか。特集『戦慄のK字決算』(全17回)の#15では、三つの回復パターンを検証した。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
コロナ禍で迫られたビジネスモデル転換
アパレル12社の経営体質改善度を検証
「今期計画はもう少しアグレッシブな内容にしたかった。しかし、コロナの現状を考えれば、われわれとしては情けない計画にせざるを得なかった」
4月14日、三陽商会の2021年2月期決算説明会で、大江伸治社長は力なく振り返った。
まさに疲労困憊であろう。4期連続最終赤字という大出血を止めるために三井物産から送り込まれた大江社長は、構造改革だけでなく、コロナ禍対策まで一手に引き受ける羽目になった。
三陽商会は仕入れのストップ、赤字ブランドの大幅コストカットに着手。加えて20年7月に東京・銀座の自社ビル売却、21年1月に180人の希望退職の募集、ブランドECを運営するルビー・グループをソニーグループ傘下のSMNに売却するなどなりふり構わず奔走したが、結果は5期連続の最終赤字となった。
「指示系統の明確化」(大江社長)という理由で、プロパーの中山雅之副社長の代表権を取り上げ、平の取締役にすることを決定したが、「経営責任を取って大江社長一人で辞任する気ではないか」と業界関係者は懸念する。
アパレル業界で追い詰められているのは三陽商会だけではない。時短営業や一斉閉店で機会損失を余儀なくされた20年。大量生産・大量消費で成り立ってきた業界はビジネスモデルの転換を迫られ、生き残りを懸けて希望退職や事業撤退、ファイナンスに奔走した1年でもあった。
各社の腐心の跡は、21年2月期決算の数値に表れている。数字が示すのは単純な売り上げの回復度合いだけではない。この危機で経営を筋肉質にして再び上昇する企業の姿が浮かび上がってきた。
コロナ危機を乗り越え、二極化が進むK字経済の世界で生き残ることができる企業はどこか。そこで、ダイヤモンド編集部は主要アパレル12社について、この1年でどれだけ経営体質が改善したのかを検証した。